自民党安倍政権の登場を機に、注目されている「アベノミクス」。
Wikipediaでは、アベノミクスを以下のように定義しています。
アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを基本方針としており、安倍はそれを「3本の矢」と表現。
個別の政策としては、2%のインフレ目標、円高の是正、政策金利のマイナス化、無制限の量的緩和、大規模な公共投資(国土強靱化)、日本銀行の買いオペレーションによる建設国債の引き取り、日本銀行法改正などが挙げられる。
アベノミクスが日本の経済を成長させるか否か。
この問いを図る指標として、複数のものが挙げられます。
1) 実質GDP
2) 名目GDP
3) 日経平均株価
4) 実質賃金
5) インフレーション率
この中で、特に最近注目されているのが日経平均株価です。
安倍政権誕生以降2月まで日経平均株価が上昇し続けたことに対し、
「アベノミクスの成果」だと評価されていることをよく目にします。
日経平均株価の回復と常に並んで語られるのが円安です。
「円安⇒輸出関連株の買い⇒日経平均株価の上昇」という考え方です。
そこで、まず、実際の日経平均株価の推移を見てみましょう。
サブプライムローン危機に端を発した2007年の株価下落。
リーマンショックからの回復後も緩やかに株価は低迷を続けた後、
2012年11月から株価が継続して向上しているのがわかります。
これが「アベノミクスへの期待による株価上昇」と言われている所以です。
しかし、あらためてじっくり考えたい点としては、
「円安⇒輸出関連株の買い⇒日経平均株価の上昇」を深く考えるということです。
円安ということは円の価値が下落しているということ、
すなわち、円建てで表現されている日経平均株価の価値も下落していることになります。
同じ「9000円」でも、円安になると価値は下がっていきます。
特に海外の投資家からすると、米ドルの投資価値としてみた場合、
日経平均株価の資産価値評価としては、為替を勘案する必要が出てきます。
そこで、米ドル建ての日経平均株価の表をまとめてみました。ご覧下さい。
米ドル建ての日経平均株価は、円建ての日経平均株価に比べ、
全体の増減傾向が小さいことがわかります。
特に2009年後半以降現在にいたるまで、USD120前後を上下しており、
安倍政権誕生後の大きな回復という傾向もかすれてしまいます。
米ドル建てで見ると、日経株価平均の上昇は、円安による価値下落と相殺され、
傾向値が小さくなっているのです。
こうしてみると、11月以降の日経株価平均の上昇は、
「円安⇒輸出関連株の買い⇒日経平均株価の上昇」だけでなく、
「円安⇒日経平均株価の相対的な上昇」とも読み取れ、
アベノミクスへの期待による「日本経済回復シナリオ」に対する
懐疑的な見方を提供してくれます。
また、経済がグローバル化している中、
一国の株価の推移は、他の大国の株価の推移と連動してもいます。
そこで、最後にアメリカの代表的な指数であるS&P500 Indexを見てみましょう。
S&P500は、サブプライムまでほぼ一貫して上昇し、
リーマンショック後には、多少揺れながらも右肩上がりで回復している姿が
見て取れます。
ドル建ての日経平均株価がさほど右肩上がりではないのと対照的です。
経済が大きくグローバル化し、マネーが国境を超えて動く中、
指標を「どの通貨建てて見るのか」ということはとても重要です。
冒頭に記した経済成長の指標も、日本国内ではすべて円建ててで語られます。
しかし、その円そのものの価値が動いているということも忘れてはいけません。
ドル建てで見た場合のアベノミクスの効果はまだ出てはいません。
実際に、アベノミクスによる経済政策・金融政策は開始されてはいません。
世界のマネーがアベノミクスをどのように見つめているのか、
円建てだけでなく、ドル建てでの指標チェックを重要性を今回は指摘させて頂きました。