「現実を視よ」を読んで満足していてはいけない


今日、MBA留学を考えているという大学時代の後輩とランチをしました。
ファンドで働きつつ、仕事に疲れてしまったので、
新たな道を模索しようとMBA留学を考えているという相談でした。

彼もこれまで海外に住んだことがなく、
家族を含めて海外で生活をしてみたいという希望もあるとのこと。
このように、日本人が海外での生活を「考え始める」とういことが、
徐々に増えてきているように感じます。

10月に入ってから、ファーストリテイリング会長・柳井正氏の
現実を視よ」という本を読みました。
この本の中で柳井氏は、日本企業や日本の若者が海外市場にチャレンジをせず、
いつまでも日本国内に「かじりついて」、
挙げ句の果てに国の借金に頼るようになってしまっていると、
檄を飛ばしています。

柳井氏は、このような「国外へ出ろ」という論調の本を
最近、立て続けに書いています。
ガイアの夜明けなどでも、
日本企業の海外市場での状況について取り上げることが多くなりました。
国を出るという選択肢を、好むと好まざるとを関わらず、
考えるようになった時代なんだと思います。

しかしながら、
実際に自発的に国外に出る選択する人は多くないように感じます。
「現実を視よ」を読んで、
「やっぱり国内にいてもダメなんだ!」と言えるようになったり、
テレビを見ながら、
「日本企業のやり方じゃ、外じゃ通用しないよ」と言ってみたり、
そういうように「語れる人」は増えてきていますが、
では、いつどのように海外へ出るつもりかという
具体的な計画はあまり耳にしません。

先月、台湾に4週間行ってきました。
日本では台湾企業の勃興ぶりが多く取り上げられていますが、
台湾国内経済は、
「失われた10年」と呼ばれるほど、不景気が続いています。

台湾の書店に、
「現実を視よ」のような「マインドを語る」本はあまりありません。
それよりも、台湾の若者は、
台湾から中国に渡って成功した起業家の本を読みながら、
「いつか国外で成功してやる」と目を輝かしていたり、
台湾人の多くの友人は、中国やアメリカで普通に仕事を始めています。

友人に連れられて、台北で、
台湾人の起業を夢見る若者が集まるカフェに行ってきましたが、
一人の学生がしきりに英語で僕に話しかけてきました。
大学を卒業したら、映画の学校に通って、
ショートムービーの会社を始めたいとのことです。
いつかアメリカにも行きたいので、
英語を自力で練習しているとのこと。
彼も、海外での生活に向けて具体的なアクションをしている人の一人でしょう。

台湾では、柳井氏の本はたくさん翻訳されています。
大前研一氏との共著「この国を出よ」も台湾、中国で翻訳されていますが、
一番人気は、「一勝九敗」。
UNIQLO躍進の秘訣を、台湾人や中国人の若者は、必死に吸収しようとしています。
ちなみに、大前研一氏の「企業参謀」も人気。
最近、三枝匡氏の「戦略プロフェッショナル」も台湾で翻訳されました。

日本人が「現実を視よ」を読んで、
「やっぱり日本はもうだめか」と飲みの場で語っている間に、
アジアの若者は、
海外で成功する方法を、行動や読書を通じて必死に吸収しています。
「現実を視よ」を読んで満足することなく、
次の一手を自分の中で、打っていってほしいと願っています。


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