日本国内の在留外国人数の推移(労働者・留学生等)


このブログでは、海外のビジネス動向を中心に書いてきました。

しかし、グローバル化は国外のことだけでなく、
国内にもグローバル化はあります。

今回は、国内の「グルーバル化」について書いてみたいと思います。

思い起こしてみると、日本では、以前から、
「日本人の人口は減少していく。外国人の受け入れは欠かせない」
というようなことが言われてきました。

また、最近では、国内企業が外国人の採用を増やすというニュースも広がり、
日本国内もグローバル化が進んでいるように報道されてもいます。

そこで、まずは、在留外国人数全体のトレンドを見て、
この国内のグローバル化が進んでいるかどうかを検証してみたいと思います。


※数値データはコチラ

このデータは、年度末の時点での登録外国人の数です。
法務省が発表している「登録外国人統計」から取ってきました。

2005年以前のデータでは、ベトナム、タイ、インドネシア、インドの国別人数は、
ローデータが取れなかったので、「その他」にまとめました。

また、日本の入管法上、中華民国(台湾)は中国と位置づけられているため、
この統計からは残念ながら、中国と台湾は一緒のデータとなっています。

このデータの中には、短期観光ビザで滞在している外国人の数も含まれますが、
年間の通算ではないため、
年度末時点に滞在している観光ビザ保有者しか含まれていません。
年間の旅行者合計ではないという点のみは誤解しないでください。

上の図からわかることは、

1) 2008年までは外国人登録者数は年々増加
2) 2008年をピークに外国人登録者数は減少している
3) 中国・台湾人の数が大きく増加
4) 韓国・朝鮮人の数は年々減少
5) 欧米人はほとんどいない

です。

順番に1〜5の内容を見て行きましょう。

1) 2008年までの合計数の増加

図からわかるように、
2008年以前は、バブル崩壊後も、1990年代後半の銀行倒産も関係なく、
一貫して、在留外国人の数は増えてきました。
この間、日本の外国人数は多くなり、
その分、日本は「グローバル化してきた」ということができます。

2008年以前の日本経済は、割と調子が良く、
自動車産業、家電メーカーともに派遣労働者や外国人労働者の数を増やし、
生産コストを抑制しながら、生産増を実現してきました。

日本の外国人数が増えてきた背景には、
日本の製造業が調子がよかったということがあります。

2) 2008年以降は減少

しかし、2008年を機に、このトレンドは大きな変化を迎えます。

2008年と言えば、サブプライプローン危機のタイミングです。
ここで何が起こったのでしょうか。

減少を国籍別に見ると、
大幅に減っているのが、ブラジル、ペルー、そして韓国・北朝鮮です。

ブラジルとペルーの国籍保持者が日本に多い理由は、
ブラジルとペルーの日系人の実子には、
「定住者」という特別な在留資格が与えられており、
日本国籍保有者と同様、
自由に就労活動をすることが法律で認められているためです。
そのため、彼らは、来日すれば、自由に働くことができます。

そのため、国内の製造業者は安い労働力を国内で確保するため、
この日系人に着目し、雇用を増やしていきました。

しかし、2008年のサブプライムローン危機そしてリーマンショック以降、
日本のメーカーは過剰在庫を抱え、生産を大幅に削減。
メーカーは、抱えていた派遣社員や外国人労働者を解雇。
職を失った外国人労働者は母国へ帰国したりもしました。

他方、韓国・北朝鮮の方が日本に多い背景には別の理由があります。
それについては、後ほど、4の「韓国・朝鮮人の数は年々減少」で解説します。

3) 中国・台湾人の数が増加

中国・台湾の方々が増えている背景は何でしょうか。
彼らは、2008年以降も数字の衰えを見せません。

中国・台湾人の増加理由を探るため、
在留資格ごとの増減を見てみます。
※総務省統計局で閲覧可能なデータが2006年分からであったため、
 2006年と2011年分で比較しました。

ここで、大きく数が増減しているものに注目してみたいと思います。

まず、数が大きく増えているのは、「技能・技能実習」の在留資格です。
このうち、大きな割合を占めるのが、技能実習です。
技能実習とは、日本の中国法人などで採用した中国人を日本に呼び、
研修目的で日本の本社などで一定期間就労させるときなどの在留資格です。

しかし、この技能実習の増加は、実は数字のカラクリで、実態を反映してはいません。
技能実習という在留資格は、2009年の入管法改正により新設された在留資格で、
2010年7月より適用されました。
この法改正により、以前は、「研修」「特定活動」に分類されていたものが、
新設の「技能実習」にまとめられた、それだけです。

数字で見てみると、
2006年の「技能・技能実習」「研修」「特定活動」の合計が131,239人。
2011年の「技能・技能実習」「研修」「特定活動」の合計が131,907人。
とほとんど増えていないのがわかります。

したがって、中国・台湾人の日本企業内OJT研修社員の数は
あまり増えていはいません。

一方で、中国人数の増加の真の背景となっているのは、
「投資・経営」「技術」「人文知識・国際業務」「留学」
「永住者」「永住者の配偶者」です。

それぞれの在留資格の中身は、

「投資・経営」:会社への出資、起業、経営参画
「技術」:エンジニア
「人文知識・国際業務」:文系ホワイトカラー
「留学」:留学生

です。

すなわち、中国・台湾人が、いわゆる日本企業の下請けとしてではなく、
日本人と同様の仕事に多数チャレンジしてきていることがわかります。
また、昨今の日本企業の中国人採用の流れも、この数字に表れてきます。

さらに、増えているのが、「永住者」「永住者の配偶者」。
日本の永住権を取得するためには、10年以上日本国内に在留し続けること、
もしくは、日本人と国際結婚をして永住権を取得することが、
主要な要件となっています。
日本に定着する中国・台湾人の数も年々増えているということがわかります。

4) 韓国・朝鮮人の減少

同様に、在留外国人数の多い韓国・朝鮮人についても、
在留資格別の増減を見ていきましょう。

韓国・朝鮮人の中で圧倒的な割合を占めるのは、「特別永住者」の在留資格です。
全体の7割を超えています。

特別永住者とは、いわゆる「在日韓国人」「在日朝鮮人」の方のことを指します。
日本は1952年、サンフランシスコ講和条約で、
日本の国家主権と韓国、北朝鮮の独立を認めた後、
日本に在留している韓国・朝鮮人、台湾人に対して
法律で日本の国籍を失くす手続きをとりました。
その結果、
戦後も日本国内に残った韓国・朝鮮人、台湾人の方々は「外国人」となりました。
※Wikipeida参照

韓国・朝鮮人の減少の大きな要因は、この在日韓国・朝鮮人の方の減少です。
背景として上がられるのは、以下の3つです。

(1)日本人との結婚の増加(日本国籍取得の申請が可能)
(2)在日韓国・朝鮮人と日本人との子供の日本国籍選択
(3)それ以外の日本国籍取得者の増加

このように、在日韓国・朝鮮人の方々の中で、
日本国籍保有者が増えていることがその背景にはあるようです。

それ以外の在留資格では、
「投資・経営」「人文知識・国際業務」の保有者は増えています。
が、一方で、「技術」「留学」の保有者は減少しています。

中国・台湾人との比較では、韓国・朝鮮人の方が、
日本での就業を得ていく数は、それほど多くはありません。

その結果、
在日韓国・朝鮮人の方の日本国籍取得が増える一方、新たな在留者は減っており、
全体の在留韓国・朝鮮人の数は減少しています。

5) 欧米人は少ない

アジア人の在留者に比べ、欧米の在留者は非常に数が少ないです。
欧米の中で最多のアメリカ人でも、約5万人しかいません。

六本木に夜行くと、たくさん欧米系の人がいるような錯覚に襲われますが、
実際には、日本には欧米の方々はあまりいません。
※在留者の数であって、旅行者の数ではありません。

今回は、日本国内のグローバル化の現状を見てみました。

最近、海外で働きたい日本人が増えてきているという話も聞きますし、
海外に活路を見出すしかないという企業の話も報道されるようになりました。

日本人が外に出て行くのであれば、外国の方も日本に増えていいと僕は思います。
その方が、日本企業は外のマーケットに対する理解や感覚が増すことに繋がります。

一方で、日本の外国人の数は、2008年減ってきています。
日本人の人口減少に加え、外国人数も減少しているのが現実。
日本市場のこれ以上の縮小を食い止めるためにも、
日本がより魅力的な国になるよう、
積極的に日本国内のグローバル化を進めて行っていいのではないかと僕は思います。


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