「世界市場シェアvs国内市場シェア」特集② 〜医薬品&ジェネリック医薬品(後発薬)〜


前回の特集①「携帯電話&スマートフォン」に続き、
今回は、「医薬品&ジェネリック医薬品」についての世界市場シェアと国内市場シェアを見ていきたいと思います。

日本の医薬品市場も、国内プレーヤーがマーケットシェアを多く取っている業界です。
一方で、国内企業の世界市場シェアはそれほど大きくはありません。

携帯電話市場と同様、日本市場に特化して進化を遂げ、
一方で、グローバル規模ではまだ競争力が高くない業界です。

それでは、中身を見て行きましょう。

1. 医薬品


※出所:国内市場シェア(IMS Japan)、世界市場シェア(IMS Health

国内市場も世界市場もともに、1位の企業でもシェアが10%以下という状況で、
医薬品市場は非常に断片化(英語でFragmentedと言います)している市場と言えます。

国内市場では、トップは外資系のファイザーですが、
2位の武田薬品工業と非常に競っています。
上記の国内市場トップ20のうち、国内企業は11社。
シェアでは、トップ20社合計の67.1%うち、日本企業が37.3%を占め、
半分以上のシェアを取っています。

世界市場では、トップ20のうち、日本企業は4社。
シェアでは、トップ20合計55.2%のうち4.6%を占めているに過ぎません。

医薬品市場も、日本企業は、
「国内では強く、海外では非常に弱い」状況となっています。

2. ジェネリック医薬品(後発薬)

それでは次に、最近話題のジェネリック医薬品(後発薬)市場に絞って
シェアを見ていきたいと思います。

まずは、あらためてジェネリック市場の概況から振り返ってみたいと思います。

ジェネリック医薬品とは、
新薬の特許が切れた後に、別の会社が同じ有効成分を使って作った医薬品のことです。
他社の新薬を、合法的に「コピー」して作ることができるため、
研究開発費を大幅に削減することができ、価格が安いのが特徴です。
※詳しい説明は、日本ジェネリック製薬協会のHPをご覧管ください。

ジェネリック医薬品は、価格が安いため、
消費者が薬を安く買えるというメリットだけでなく、
日本の総医療費の約20%を占める薬剤費支出を抑えることができます。

このように「薬を安く買いたい」と思っている人は各国にたくさんいます。
そのため、世界各国で医薬品全体に占めるジェネリックの割合は高まっています。

この図は、世界各国において、
医薬費全体に占めるジェネリックの割合(金額)を示したものです。
韓国を始め、
他の欧米の主要国でもジェネリックが大きなシェアを持っていることがわかります。
一方で、日本は、2010年時点の5%と低く、
2015年でも9%にまでしか達しないと予測されています。

数量ベースでは、2009年時点のデータですが、日本ジェネリック製薬協会のHPで
公開されています。

数量ベースでも、日本ではジェネリックは他国に比べ浸透度が薄いことがわかります。

※発表機関によって日本に数値にはばらつきがあるようです。
例えば、日本ジェネリック製薬協会では、2011年2Qの結果として、
ジェネリックが全体に占める割合は、
金額ベースで9.7%、数量ベースで23.2%と発表しています。

このように、
ジェネリック市場は日本ではまだ存在感が大きくないことが見て取れます。

さて、ここで企業ごとのシェアを見て行きたいと思いますが、
日本国内市場だけに絞ったマーケットシェアのデータがなかったので、
世界市場のシェアだけを見てみたいと思います。


※出所:世界市場シェア(BCC Research

ジェネリックのシェアトップ企業は、医薬品全体の顔ぶれと大きく異なります。
トップを快走しているのが、イスラエルのTeva。
日本ではあまり「テバ」の知名度は高くありませんが、
大正薬品工業を完全子会社化し、日本のジェネリック市場を開拓しています。

2位のサンドは、ノバルティスのジェネリック医薬品事業を担当する子会社です。

この中には、日本企業の名前は残念ながら、ありません。
日本の医薬品メーカーは、
自力でのジェネリック医薬品市場開拓に大きな遅れを取っています。

ジェネリック市場の新興プレーヤーの中には、
インドなど新興国の企業も多く、国際競争はますます激しさを増していきます。 
 
シェアだけを見ていると、
悲観的にならざるをえない、日本企業の世界市場での存在感ですが、
良いニュースもあります。

まずは、国内市場で大きくシェアを分け合い、巨大プレーヤーが少ない日本企業ですが、
ここ数年で、企業合併が活発化し、戦力的な投資を行える体制を整えています。
医薬品業界の国内M&A

また、世界市場への布石としては、
第一三共が、ジェネリック市場シェア8位の
ランバクシー(インド)を買収したことが話題を集めました。
医薬品事業に参入した富士フィルムも、
インドのジェネリック大手ドクターレディーラボラトリーズ(Dr.
Reddy’s Laboratories)と業務提携を行い、
日本のジェネリック市場開拓で協力をしています。

一方で、日本国内のジェネリック専業メーカーである、
日医工、沢井薬品、東和薬品などは財務基盤が弱く、
国内市場を開拓する力や、海外市場に攻め入るには、まだ時間がかかりそうです。

これまで国内市場に焦点を当てて来た日本の医薬品メーカー。
今後の国際競争で生き残るためには、
新興国でどれだけシェアが取れるかが勝負となっていきます。


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「世界市場シェアvs国内市場シェア」特集② 〜医薬品&ジェネリック医薬品(後発薬)〜 への1件のフィードバック

  1. まうんてんごりら のコメント:

    医師の収入 国際比較を調べてびっくり 外国のそれは1,3~1,7倍と出ました
    これでは憤懣やるかたなしとなりますね? でも皆保険制度の為に抑えられているのです
    そこで経済成長と共に薬の大量処方が当たり前になりました 薬だけは保険も認めない訳にはいかないのでしょう 結果薬漬けになりました 
    日本は膨大な薬生産国で殆ど国内消費と聞いております
    日本のメーカーがジェネリックに弱いのは日本の医師が新薬を使いたいからでは?収入が増えるからでしょうね?
    薬一粒飲んだら寿命が一分縮むか老後の寝たきりが一分長くなると思うので私は出来るだけ飲まないように心掛けました 
    医師は患者には飲ませても自分では決して飲まない事知ってます。

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