今回から数回にかけて、
様々な製品の世界市場シェアと国内シェアを取り上げていきたいと思います。
日本企業の海外市場での苦戦をよく耳にするようになりました。
しかしながら、日本国内にいるとその「苦境」をあまり実感することがありません。
なぜなら、日本国内には日本製品で溢れているためです。
率直に言って、日本人は日本製品が好きなんだと思います。
それは、日本製品が日本人の指向に合わせて進化して来た成果でもありますし、
日本人が抱く「ジャパン」ブランドの強さの証でもあります。
アメリカでたくさん売れていた、SamsungやLG製の家電。
日本に帰国した際、実家で妻や母親を交えて、どう家電を揃えるか話をしていたとき、
「別にSamsungやLGのでもいいんじゃない。安そうだし。」と僕が切り出すと、
母親は、「え〜、別にあえて韓国のを買わなくてもいいんじゃない?」と返答。
日本人の日本ブランド好きを感じた一コマでした。
しかしながら、日本人が日本企業の海外での苦境を実感できないことは、
海外市場で日本企業が強くなって行かない大きな要因にもなっていると思います。
一言で言えば、「危機感の欠如」というものかもしれません。
そこで、世界市場と日本市場のシェアを今回から伝えて行こうと思います。
1. 携帯電話
まずは、「ガラパゴス」という名が浸透してしまった、
携帯電話市場から見て行きたいと思います。
※アメリカにいる間に、日本の友達から「ガラケー」という言葉を聞いたとき、
最初なんのことだか、さっぱりわかりませんでした笑。
※出所:国内市場シェア(IDC Japan)、世界市場シェア(IDC)
日本での首位はシャープ、続いて、富士通東芝。
日本でも人気のアップル社iPhoneが3位に入っていますが、
それ以外はほぼ日本ブランドが占めています。
一方、世界市場では、残念ながら上位5位までに日本ブランドはありません。
かつて世界市 今や上位5位に入ることができません。
韓国勢のSamsungやLGの検討も見て取れます。
2. スマートフォン
続いて、より細かく、
スマートフォンだけに絞った場合のシェアを見て行きましょう。
※出所:国内市場シェア(MM総研)、世界市場シェア(Tomi Ahonen Almanac)
スマートフォンでは、国内勢が多数を占めていることがわかります。
一方、海外勢では、アップルのiPhoneが2011年通期で1位となり、
サムスンもNECカシオを抑え、第5位になっています。
世界市場では、ソニーエリクソンのみが辛うじて6位(5.5%)にランクインしており、
それ以外の日本勢はほぼ世界市場におけるシェアは取れていません。
世界では、勢いを失ったかつての王者Nokiaを尻目に、
AppleとSamsungが熾烈なシェア争いを繰り広げています。
台湾のHTCも世界では大きく奮闘しています。
世界市場でシェア争いをするということは、とても重要なことです。
日本では、「シェアの追求ではなく、利益の追求」という言葉が言われ始めましたが、
本質的にはシェアを失うことは、利益率を下げることになります。
その背景には、「規模の経済」があります。
シェアを取れば取るほど、携帯1台あたりの固定費を下げることができ、
それによって、販売価格を下げたり、生じた利益を研究開発費に回し、
将来の競争力の糧にすることができます。
国内市場でシェアが取れている国内勢にとって、日本市場は一種の「安全圏」です。
「日本ブランド好き」の顧客のおかげで、海外勢との競争を避けることができています。
しかしながら、それもいつまで続くかはわかりません。
AppleやSamsungといった海外勢が日本でのシェアを拡大しているということは、
日本人が海外ブランド受け入れ始めたということでもあります。
2012年に入り、日本の各社は生き残りをかけたアクションを起こし始めています。
NECカシオは、
携帯子会社の全従業員の1/4にあたる約500人の人員削減・配置転換を発表。
東芝は、携帯事業からの撤退を発表し、
東芝が保有していた富士通東芝モバイルコミュニケーションズの全株を、
富士通に売却しました。
一方で、富士通は、国内向けのスマートフォンが2011年好調で、
国内市場でのシェアを伸ばしました。
今後の国内市場戦略や海外進出に注目が集まっています。
ソニーは、エリクソンが保有していた
ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの全株を買い取り、
新たにソニーの完全子会社とすることで、生き残りをかけた「賭け」に出ました。
シャープは、台湾の鴻海との事業提携の中で、携帯事業でも連携することを発表。
中国市場でのシェア拡大を模索しています。
パナソニックは、スマートフォンでの出遅れと海外市場不振を立て直すため、
国内の生産拠点であった静岡工場での携帯電話製造を全面中止し、
生産をすべて国外に出すことを発表しました。
京セラは、スマートフォンで米国市場に再参入することを発表しています。
海外市場を懸けた争いにどこまで国内勢が本気になるか、
ぜひ国内勢が保有する技術を世界に伝えていって欲しいと思っています。
ピンバック: 「世界市場シェアvs国内市場シェア」特集② 〜医薬品&ジェネリック医薬品(後発薬)〜 | アメリカ・サンダーバード(Thunderbird)MBA留学ブログ