CEOになれるのはどの部門担当役員か?~CFOはCEOになれるのか?~


サプライチェーンのクラスを担当しているCavinato教授。

前回も少しご紹介しましたが、
Cavinato教授は、サプライチェーンを「バリューチェーン」ととらえているため、
この講義の担当範囲は、戦略からオペレーション、ロジスティクス、
さらには、財務、人事組織まで非常に幅広い内容を扱います。
こうすることで、経営や事業を、経済全体のバリューチェーンにおいて定義し直し、
そのバリューチェーンに基づいて、
財務、オペレーション、製造、設計、資材、物流を再編していくべきだと
いうのが、Cavinato教授の趣旨です。

今週の事業では、
アメリカおよびヨーロッパにおける経営のトレンドについて話がありました。

Cavinato教授は、サンダーバードで講義を担当している以外にも、
アメリカ最大のバリューチェーンに関する専門誌の編集委員や、
バリューチェーンに関するコンサルティング事業を自分で実施ているため、
年に何度もアメリカのFortune500クラスのCEOにインタビューをしたり、
CEOや他のエグゼクティブメンバーを対象にしたサーベイを行っています。

その中で、Cavinato教授が、最近のトレンドとして確証しているのが、
「もはやCFOがCEOになる時代は終わった」
というものです。

これを説明するため、
教授はアメリカの過去の経営トレンドを解説してくれました。

1940年代まで:エンジニア起業家の時代

まずは時代をだいぶ遡って1940年代。
ロックフェラーやフォードが財を築いた時代です。

この時代のCEOは企業創業者でした。
特に、新たなテクノロジーを事業化する起業家が多く、
CEOの大半は、科学者やエンジニアでした。

1940年代~1960年代:製造部門のトップがCEOに

1960年代になるとR&Dだけでなく大量生産が経営のカギとなります。
そして、製造部門の人員は他部門に比べ非常に大きくなり、
製造部門トップのマネジメント範囲は、
企業の大半の人事、財務にまで及ぶようになります。

CEO, CFO, CMO, CIO

その結果、製造部門のトップは、実質的にCEOのように、
職種横断的なマネジメント能力が身についていくようになり、
結果的にCEOに一番近い存在となっていきます。
そして、その製造部門トップが実際に次期CEOとして登用されていきました。

1960年代~1980年代:セールス・マーケティング部門が重要視

製造部門が力を持っていた時代からの転換をもたらしたのがP&Gです。

製品の顧客志向やブランドの価値をいち早く見出したP&Gでは、
他社に先んじてセールス・マーケティング出身のCEOが誕生します。

このP&Gの動きは他社にも大きな影響を及ぼしていきます。
従来、「技術的に優れたものを創る」という企業マインドだったのに対し、
この時代に、「顧客が求めているものを創る」
「何を売るかだけでなく、どう売るかも重要」
「商品の機能的価値だけでなく、感覚的価値も重要」
というように、CEOの関心が大きく変わっていきました。

1980年代~2005年頃:CFOの時代

1980年代頃から企業内部のオペレーション改革に利益増加の可能性が見出されます。
これを主導したのがCFO。
CFOの従来の最大のミッションは年次報告書を作成すること。
他のボードメンバーより地位も給与も低い位置付けでしたが、
この時代から最もCEOに近い存在へと存在感が上がっていきました。

CFOは、企業内部のオペレーション観察ではなく、
財務諸表分析を通じて改革のポイントを見出していきました。
主な取り組みは、「在庫の圧縮」「倉庫の削減」「他の資産の圧縮」
「人員の削減」「キャッシュサイクルの短縮」「支払時期の先送り」
「リエンジニアリング」「資産のオフバランス」「アウトソーシング」
等です。
彼らはコスト削減できるポイントを次から次へと洗い出し、
これをCEOに直伝して経営改革を推し進めていきました。

2005年以降:CFOの時代の終焉

しかし、2005年頃からCFOの存在感が小さくなっていきます。
それは、コスト圧縮をできる限り進めた結果、
コスト削減の「ネタ」がなくなり、CFOの力で利益増加をできなくなった
ことが原因です。

一方で、行き過ぎたコスト削減の弊害も指摘されるようになります。
例えば、コンタクトセンターをインドやフィリピンにアウトソーシングした
企業では、顧客ニーズをキャッチする力や、
重要な顧客接点を通じて客を魅了する力が弱まり、
商品やサービスの競争力を大きく損ねていきました。

このような状況の中で、CEOが求めるものが、
「コスト圧縮による利益増」から「売上増による利益増」へと移ってきています。
新たな製品ニーズは何か、新たな技術をどのように商品化するか、
パートナー企業との連携を通じてどのように新たな市場を創造するか、
商品上市タイミングを早めるためには何が必要か。
このようなアイデアがCFOから出てくることは少なく、
CEO候補がCFOから他の部門出身者へと再び多様化してきています。

では、最近では、どの部門出身者がCEO候補として人気なのでしょうか。
Cavinato教授は、アメリカやヨーロッパでのヘッドハンターの意見を通じ、
以下だと断言します。

「2つ以上の専門性を持つ希少人材が、CEO候補として非常に人気を博している」

すなわち、より企業競争力向上の複雑性が増している中で、
部門横断で経営の方向付けをシフトしていける人が
求められているということです。

従来、アメリカは職種特化型のキャリアパス(スペシャリスト養成)、
日本は職種横断型のキャリアパス(ゼネラリスト養成)だと言われてきました。

しかしこのアメリカのキャリアパス特性も今後変化していくのかもしれません。


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