今学期に履修しているサプライチェーンのクラスで、
面白い切り口の説明がありました。
それは企業の戦略上(大きな経営課題のとらえ方)の観点で、
会社のタイプを2つに分類しようというものです。
1)サプライチェーン志向企業
このタイプの企業は、
「リソースを調達して、加工して、売る」という
一連のサプライチェーンを強く意識し、
それを効率的に回転させることに主眼を置いています。
このような企業は、会社内部の動きを緻密に分析し、
「低コスト化」や「生産性向上」を追求していきます。
そして、そのための具体的なアクション設定や目標設定のために、
ベンチマーキングやプロセス改善を、主たる戦術として用います。
具体的な取り組みとしては、
・作業工程の削減
・設備稼働率の向上
・自動化による人件費削減
・規模の経済追求のための生産量拡大
・在庫の削減
・ITを用いた生産計画の精緻化
・資金回収サイクルの短縮
・組織統合による管理費削減
が挙げられます。
こうした取り組みは概して「コスト削減」を意図したものが多く、
企業経営としては、「利益重視経営」の色が濃くなります。
2)バリューチェーン志向企業
一方でこのタイプの企業は、
自社の製品やサービスの「価値」が、
マーケット全体の中でどのように位置付けられるのかに強い関心があります。
そのため、既存のビジネスモデルにあまりとらわれず、
会社の外部(顧客、サプライヤー、技術、社会環境等)の変化を早くキャッチし、
その変化に合わせて、サービスや製品を刷新していくことを、
主要戦術としています。
特に、自社の周辺だけでなく、全体のバリューチェーンを視野に入れるため、
顧客の顧客、顧客の顧客の顧客・・・
サプライヤーのサプライヤー、サプライヤーのサプライヤーのサプライヤー・・
の動向を分析し、
大きなチェーンの中での、抜本的な変化を巻き起こそうとします。
具体的な取り組みとしては、
・卸の中抜き
・顧客との接点一本化による顧客ニーズの包括的な把握
・サプライヤーとの共同R&Dの実施
・関連ニーズを統合した顧客向け「ワンストップ」サービスの提供
・業界規格の統一によるプラットフォームサービスの提供
・関連企業とのデータベース統合による業界全体のベストマッチングの提供
・市場シェアを牛耳ることによる価格交渉力の強化
が挙げられます。
こうした取り組みでは、内部アクションの効率化ではなく、
いかに市場や顧客のニーズをキャッチしていけるかという
「顧客へのリーチ」「売り上げ拡大」が施策の狙いとされています。
そのため、新たな市場を作り出していく、
「売上重視経営」の色が濃くなっていきます。
イノベーションを重視する企業は、この「売上重視経営」が多いともいえます。
昨今の変化が激しい環境では、
この「バリューチェーン志向企業」が強みを発揮します。
利益重視経営か売上重視経営か?
この二分法では、複雑な企業経営を綺麗に分類できないかもしれません。
しかしながら、この尺度は、企業が「何を重視しているのか」という
大きな方向性を掴むには、とても使えそうな気がしています。
ということで、個人的に、この二文法をとても気に入りました。