減速するインド・中国経済


昨日、インド中央銀行、RBI (Reserve Bank of India)のD Subbarao総裁が、
加熱していたインフレーションを抑制する意思を表明しました。
(ニュースはコチラ

具体的には、金利を引き上げる政策を強く推し進めていくということです。

Subbarao総裁は、今回のインフレーション抑制政策が経済に与える影響について、
このように説明しています。

消費抑制と投資促進を同時に実現させることはできない。すなわち、(インフ
レーションの抑制により)、私たちは短期的には経済成長を犠牲にし、中期
的な高度経済成長環境と安定的なインフレーションを実現させなければならない。

つまり、現在、過熱気味のインド経済を沈静化させていくということを意味しています。

実際に、インドはここ数年、激しいインフレーションを経験しています。

アメリカから始まった世界経済不況の中、
RBIは成長を持続させるため、他国と同様金利の引き下げを実施しました。

金利引き下げによる投資環境がさらに向上する中、
欧米の経済不況で行き場を失ったマネーが大量にインドに流入し、
インド経済が沸騰。インフレーションは10%を超える水準にまで上がりました。

その後、インフレーション率は、2010年にピークを迎え、
現在は9%前後までに落ち着いてきていますが、それでも以前高い水準にあります。

高すぎるインフレーション率は、社会に悪い影響を与えていきます。

まず、食料品等の生活必需品の価格が上がっていきます。

理論的には物価向上は賃金の上昇ももたらしていくのですが、
例えば企業が先行き不安から賃金上昇率を抑制すると、
これまで給与で買えてきたものが、買えなくなっていきます。
購買力の低下は、人々を不安にさせ、ときに暴動のもととなります。

また、高いインフレーションのもとでは、人々が投資に積極的になるため、
多額の借金をして、そのお金を投資をしていきます。
しかしながら、将来、経済が悪化し、期待していた収益が得られなくなると、
借りたお金を返済できなくなり、経済を大きく混乱させる原因となります。

RBIは、このような社会不安を防ぐため、
現在の8%台のインフレーション率を、早期に5%にまで低下させ、
さらに、中期的に4~4.5%まで下げることを発表したのです。

同様のインフレーション抑制政策は、中国でも取り組まれています。

中国でも現在、7%を超えるインフレーションを経験しています。
7月に温家宝首相は、
インフレーションの抑制は中国政府の最重要政策であると発表しています。
(ニュースはコチラ

このように、インドや中国でインフレーション抑制が掲げられていることは、
国内の社会の安定化させるためには非常に重要だと考えられています。

しかしながら、一方で、
世界のマクロ経済の視点から考えるとほかの問題が浮上してきます。
昨今の欧米での深刻な経済不況を前に、
世界の投資家たちは、有望な投資先の検討に非常に苦労をし、
金余りの状態となっています。
そのうちの何割かが、中国やインドといった新興国市場に流れ込み、
新興国市場の活性化だけでなく、世界経済を下支えをしてきました。

この状況で、インド・中国の経済が下降局面に入り、
世界経済を下支えしてきたマネーが、再び行き場を失うことは、
世界経済全体にとって悪影響を及ぼします。
国内需要の低迷に伴い、インドや中国で利益を上げてきた日欧米の企業は、
再び市場を失うこととなります。

一方、2008年から続けてきた日欧米での政府の景気刺激策(財政政策)は、
政府財源の枯渇化とともに、継続が難しくなってきています。

インドと中国でのインフレ抑制がスムーズに進み、
新興国での有効需要が安定的に創出されるかどうか。
世界中の金融関係者の視線が、そこに注がれています。


カテゴリー: 経済・ビジネス・経営 タグ: , , , , , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>