約1カ月にわたったサンダーバードの冬休みが終わり、
今日から春学期がスタート。
4月末まで睡眠時間を削って再び死闘を繰り広げていきたいと思います。
さっそく、今日のグローバル戦略の授業では、
企業がグローバル企業になるべきか否かについてのガイダンスがありました。
そもそもグローバル企業とは何でしょうか。
コカ・コーラ、マクドナルド、トヨタ自動車、ソニー、グーグル、GAP。
これらがグローバル企業の例としてしばしば挙げられます。
しかし、実際のグローバル企業と呼ばれる企業の売上をみてみると、
多くの企業は、日米およびヨーロッパにほとんどの売上が集中しています。
真の意味で、「グローバル」と呼べる企業はほんの一握りしかありません。
企業のグローバル戦略を考える際に、
上記のように、グローバルを「世界中の国で売上を出すこと」と定義することは
十分ではありません。
より重要な視点は、バリューチェーンのグローバル化です。
ひとつの製品を販売する際の、
原材料仕入れや購買、生産、R&D、ITシステム、コールセンター、販売など
バリューチェーンが国境をまたいで展開することが昨今、多くなっており、
これをいかにマネジメントしていくか。
これをビジネスのグローバリゼーションとして定義するほうが、
今の時代をより正確に表現できます。
では、なぜ多くの企業がグローバル化を始めているのでしょうか?
その利点は何なのでしょうか?
グローバル化を「いろんな国で売る」と定義してしまうと、
利点は、「売上を拡大できる」となります。
しかし、売上を拡大するのであれば、国内にも白地のマーケットをたくさんありますし、
中国一国をターゲットとするのでも、目的は達成します。
一方で、サンダーバードのInkpen教授とRamaswarny教授は、
“End of the multinational: emerging markets redraw the picture”の中で、
グローバル化を「バリューチェーンのグローバル化」と定義することで、
より視点がダイナミックにすることができると説きます。
グローバル戦略のポイントは3つのAがキーワードです。
1. Aggregate (市場の統合=スタンダライゼーション)
企業がグローバル化する中で可能となるのは、
製造・販売数を拡大することによる「規模の経済」という利点です。
国内や特定のマーケットだけでなく、数多くの国で同一の製品を展開することにより、
製品当たりのコストを削減し、利益率を拡大することができます。
アップル・コンピュータのiPhoneや任天堂のゲーム機などが例として挙げられます。
2. Adapt (現地への適応=カスタマイゼーション)
世界のマーケットは、すべて統合できるわけではありません。
広告宣伝や商品展開、店舗オペレーションなど、
国やエリアなど市場ごとにカスタマイズしなければ販売数は増えません。
いかに現地の市場に適応するかが2つ目のポイントです。
3. Arbitrate (裁定取引=ネットワーク)
企業がグローバル化すると、裁定取引による利点が期待できます。
同一の原材料でも、国によってその価値は異なります。
安く買えるところで購入し、高く売れるところで販売するというように、
ネットワークを活用することで、最低の利点が得られるわけです。
原油や鉄などの原材料はわかりやすい例ですが、
資本コスト(どこで資金調達するか)、ナレッジなど、
同一の財で価値が異なるものにはすべて、裁定のチャンスがあります。
優れたグローバル企業は、この3つのうち2つを享受していると言われています。
例えば、1と2は一見矛盾しているようにみえます。
一方で統合し、他方で現地化しろと言っており、
「どちらが正しいの?」と考えてしまうかもしれません。
しかし、ポイントはバリューチェーンで考えることです。
製造・資材購買はAggregateのによって規模の経済を得、
広告宣伝はAdaptによってカスタマイズすることは可能です。
実際に、サムスンなどの韓国メーカーは、バリューチェーンごとに
この2つをうまく組み合わせて戦略を構築しています。
バリューチェーンごとに利点を考えることで、
効果的にグローバル戦略を磨き上げることができるのです。
残念なことに、現状としては、グローバル展開の理由について、
「同業他社が海外進出したから」
「国内だけじゃ売上が伸びないから」
と、利点を深く検討している企業は多くはありません。
ロンドンビジネススクールのAlexander非常勤教授は、
以下の3つをおさえておかないと、企業のグローバル化は失敗すると
警鐘を鳴らしています。
1, 得られる利点を正しく見積もる
=利点を過大評価しすぎる企業が多い
2. 必要なマネジメント力を正しく見極める
=利点を定めても、プランを遂行できない企業が多い
3. コストを正しく見積もる
=海外展開については現地化などのために、想定以上に
コストがかかることが多い
日本では、グローバル化の必要性が叫ばれていますが、
大手メーカーなどの先行プレーヤーでさえ、グローバル戦略の構築に
苦戦を強いられている状況でもあります。
そのため、「国内では無理なので海外に」というネガティブな発想だけではなく、
グローバル化から何を得たいのかを、戦略として深く検討する必要があります。
その際に、上記のフレームワークは、役に立つのではないでしょうか。
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