【出張講義】企業創造力はどう築く?(Google)


一昨日、Googleのとても偉い人が講演をしにきにきてくれました。
※お忍びだったので、名前の記載は避けたいと思います。

Googleと言えば、画期的な商品を次から次に世に送り出していく、
イノベーティブな企業の代表です。
カジュアルなオフィス。
自分の仕事の20%を自分自身で設定できるユニークな人事評価制度。
世界各国の優秀なエンジニアが集結。
サイト滞在時間でこそ、最近Facebookに世界一の座を奪われて
しまいましたが、
それでもGoogleの技術なしには今のウェブの世界は成り立ちません。
そして、引き続き、技術保有企業を多数買収し続けています。

どうしたら、このような企業創造力を築けるのでしょうか?

彼の講演のポイントは、

「アイデアを思いつくことは難しいことではない。それを実行するのが難しい。」

例えば、あるアイデアを思いついたとします。
それは、自分でも「これは面白い!便利だ!画期的だ!」と思えるほど、
魅力的なアイデアです。
しかし、実際に「もの」にするには、
実現するために必要な技術を開発したり、プログラムを考えたり、
実用性に足る利便性を確保するための改善を行ったり、
実際に動作するのかのテストを行ったり、
アイデアを思いつく以上に、ハードルがたくさんあります。

こちらの動画(英語)をご覧ください。

これは、Googleが現在開発中の自動走行車についてのニュースです。
講演では、実際にこの車が、サンフランシスコの市内を縦横無尽に
走り回る映像を見せてくれました。
「自動走行車ができたら、便利だろうな」と思いつくのは簡単です。
Googleはそれを実現するために、実際に商品を開発し、試乗走行し、
どうすれば実用化できるのかを必死に追求することに一生懸命なのです。

「考えつくことは、すべて実現できる。」
「エンジニアはトライしてみたいことをすべてトライすることができる。
そしてそれを実際に実行することができる。」

彼のこの言葉は、エンジニアの実行を後押しするGoogleの会社としての
考え方が表れているように思います。

「ものごとをありのままに見る。それが大切だ。」
「しかし、何が他と違うか見極めるまで、再び見つめなくてはいけない。」

そして、おごった気持ちを持つのではなく、現実をありのままに受け止め、
現実からすべてをスタートさせる必要があるのです。

Googleの2009年の売上高は$23,651 million。
そのうち、研究開発費は$2,843 million。売上高の12%です。
日本円にすると、研究開発費は約2500億円に上ります。
膨大な売上高が、多額の研究開発を可能にしています。
ちなみに、税引き後利益は$6,520 millionです。

では、なぜ、ここまでして研究開発に注力するのでしょうか?

彼はこう答えます。

「研究開発はPRだ。Googleのブランド構築のためには、どんな広告宣伝を
行うよりも、実際に製品を世に出すことが、最大のPRだと考えている。」

この製品は利益を出せているの?
Googleの製品を見て、そう思うことがあります。
しかし、彼のこの言葉を聞いて、合点がいきました。
自分なりに解釈してみると、以下のようになります。

通常の研究開発の考え方は、
「製品化するために技術開発を行う」というもので、
“売上”のために研究開発を行います。

しかし、Googleの発想はそうではありません。
彼らは研究開発が財務諸表に与える影響を2段階に分けて考えます。

「まず、研究開発し、製品化する。それはPRになる。」
Googleは製品開発を”広告宣伝費”と位置づけているようです。
つまり、CMなど広告宣伝にコストをかける替わりに、
研究開発・商品開発にコストをかけるという考え方です。
実際にGoogleの2009年のセールス・マーケティング費は$1,984 million。
売上のたった8%です。
さらに、この費目には、広告宣伝だけでなく、
営業費用(人件費・販促費)なども含まれています。

「次に、製品化した技術が売上にできそうであれば、収益化する。」
つまり、すべての開発技術で売上を狙いにいっているのではないのです。
開発技術の一部のみを売上化しても利益がでるよう、
研究開発費、セールス・マーケティング費、売上の3つを全体として
バランスするように考えているのです。

そのため、研究開発は、研究開発の段階で留めておかず、
コストをかけてでも、製品化しているととらえられます。
なぜなら、製品化しないと、世の中の目にとまらないため、
広告宣伝として機能しないからです。
エンジニアに製品化するチャンスを与えていくGoogleの姿勢は、
この考えると、非常に理に適っています。

ここまで理解を深められると、なぜGoogleが、80:20という、
「自分の業務時間の20%はミッションを自由に自分で設定してよい」
という人事評価制度があるのか、よく理解できます。
それは、この20%が、
エンジニアのアイデアを自主的に製品化させることにつながり、
最終的にGoogleという企業全体の利益につながるからです。

しかし、ここまできて、最大の疑問は、
「どうしたら、自由時間を与えるだけで、自主的に製品化をしたくなるような
エンジニア集団を築くことができるのか?」です。
彼の答えは、合理的でもあり、ちょっぴり残念に思うものでもありました。
「アイデアのあるエンジニア集団を築くために重要なことの99.99%は人材採用だ」
Googleがイノベーティブなエンジニアを育んでいるのではなく、
アイデアのあるエンジニアを採用しているから、
Googleのエンジニアにはアイデアがあり、イノベーティブである。
確かにおっしゃるとおりです。
しかし、Googleの人事制度や企業文化から企業創造力を向上しようと努力する
人々からすると、この結末はなんとも残念なかんじでした。。。

最後に、彼のおススメの本を紹介しておきます。
Steven Johnson “Where Good Ideas Come From: The Natural History of Innovation”


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