【学校ボランティア活動】動機形成は純粋であるべきか?


土曜日の今日は、Thunder Careというアクティビティがありました。
これは、年に一度、サンダーバードが、地域のコミュニティに対して、
ボランティア活動を行うイベントです。

強制ではなく、自由参加です。
それでも集まったのは、総勢100名に上ります。
現在の生徒数は、約500名なので、約1/5が集まったことになります。
「ボランティア精神に溢れてる」と言いたいところですが、
実は、こんなに人が集まる背景には、からくりがあります。

現在、9月から授業が始まったMBAの学生、約200名は、
全員、統計学の必修授業を履修しています。
そして、その統計学の教授が、このThunder Careをサポートしています。
教授曰く、「Thunder Careに参加すると、成績を3点加点する」。
この方針を掲げ、学生の参加を促したのです。
餌を与えるという、インセンティブを使った募集活動により、
多くの学生が参加しました。
それが成功の背景のひとつとして作用していると思います。

行動の背景についての「美徳」を重んじる日本文化では、
インセンティブを使った動機形成は、あまり誉められないかもしれません。
ですが、結果を重視するプラクティカリズム(実用主義)のアメリカでは、
動機形成の方法よりも、行動の結果を重視します。

Thunder Careに参加した動機は不純かもしれませんが、
実際の結果は素晴らしいものでした。

僕たちのチーム約20名が訪れたのは、地域のチャータースクールです。
チャータースクールとは、アメリカの独特の教育機関で、
親や教員、地域団体などが設立した政府公認の学校(特に小学校)です。
チャータースクールは、地域の政府や教育委員会の教育方針に縛られず、
独自のカリキュラムや教育理念を掲げた教育を施すことができます。
予算については、政府が公立学校と同等の補助を行うため、
公立学校と同様に、授業料の徴収はありません。

チャータースクールからの依頼は、ガーデニングと運動場の整備。
手がかけられずに荒れてしまった庭や花壇を整備し、さらに
石だらけで危険な運動場を整備したいというものです。

そして、開始から2時間後。

綺麗な花壇が完成しました。
ここで今後、野菜を栽培していくそうです。
整備前の写真を撮り忘れてしまったのですが、
来たときここは、雑草が生い茂り、盛り土もなく、ただ固い地面が広がる
だけの花壇でした。
それが、2時間後、立派な野菜畑に生まれ変わりました。
「アメリカの子供たちは、ファーストフードばかり食べている。
今後、ここで野菜を子供たちと一緒に育てて、野菜づくりの楽しさや、
野菜のおいしさを、子供たちに教えていきたい」
チャータースクールの先生はそう話していました。

チャータースクールの裏庭です。
ここも一面に雑草が広がる、荒れ放題の状態でした。
それが2時間後、みんなで草むしりをし、綺麗にすることができました。
今後、この裏庭も、花を植えて、花壇にしていくそうです。

運動場は、子供たちが、ドッジボールやサッカーをして遊ぶ場所です。
が、いたるところに小石が広がり、怪我をしやすい状態でした。
そこで、運動場の小石をひとつひとつ取り除いていきました。
同時に、運動場の周囲のゴミや枯れ葉などを掃除していきました。

正直、感動したのは、学生たちの働きぶりです。
全員、黙々と一生懸命、草むしりや畑づくり、
運動場整備に取り組んでいました。
そして、妥協を許さないのです。
誰もやり方を指示する人も、監視する人も、出来具合をチェックする人も
いませんでしたが、
全員が主体的に完璧な状態を目指して、効率的に仕事をしていきます。

アメリカ人、日本人、インド人、アルゼンチン人、ベトナム人、中国人など、
出身国にかかわらず、依頼主であるチャータースクールの想いをくみ取り、
次々と事が成されていくのは、圧巻でした。

最後に、チャータースクールの先生からは、
「本当に感謝しています。子供たちも感謝しています。
きっと自分たちだけやったら、1か月かかったと思います。
それを皆さんは、1日、それも数時間でやってくださいました。」
と嬉しい言葉をいただきました。

そして、その最後の話があったとにも、まだやり残したことを思い出し、
各々が自発的に最後の仕上げにとりかかっていきます。
それを見たときに、「サンダーバードは素敵な学校だな」、と思いました。

僕たちのチーム以外にも、牧場の整備にいったチーム,
同様にガーデニングの整備にいったチームなど、
計6チームがそれぞれの場所で活動をしていました。

参加の動機は「3点の成績」だったかもしれませんが、
実際の活動は真剣で心がこもり、いい結果を残せました。
ひょっとしたら、教授の「3点」方針がなかったら、
こんなに人が集まらず、成果も小さくなっていたかもしれません。

確かに、成績で人を釣ることには、公平性や倫理性などの
問題がはらんでいます。
「ボランティア活動と統計学の成績は、本来無関係」
「当日他の予定があり、参加できない学生もいる」
このような考え方もあります。

しかし、3点の成績は、3/100でわずか3%。
実際にこのイベントに参加しないからといって、
また、参加したからといって、
自分の成績に重大な影響を及ぼすわけではありません。
また、加点方式ですので、
例えば、テストで100点を取れれば、
この3点がなくても100点となり、フルスコアを獲得できます。
また、この活動には、事前の説明や移動時間も含め、
約5時間がかかっています。
純粋に投資対効果だけを考えれば、
この5時間を統計学の勉強にあてたほうが、良い成績を望めます。

したがって、3点の加点の本当の意義は、
「面倒くさいな~」「その時間も勉強にあてたい」と思っていた
学生たちの背中を、少しだけ押し、
参加することの学生の主体的な意味付けをサポートしてくれた
ことにあったのだと思います。

このように考えると、
「3点加点」という方法を使って、人の躊躇する気持ちを取り除いた、
サンダーバードのやり方は、正しかったと思います。


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