前回の内容はコチラ。
もうひとつの論文は、多文化でチームプレーを実施するうえでの、
問題点を紹介してくれました。
1. 直接コミュニケーション vs 間接コミュニケーション
日本の文化を「間接コミュニケーション」の例として、違いが紹介されていました。
例① 議論の進め方の違い
アメリカ人は、会議をする際に、率直に会議の場で自分の意見や好き嫌いを
伝えるのだが、
日本人は会議をする際に、会議中に発言やディスカッションをしつつも、
休憩に入ると、仲間同士でお互いの意見を確認しあう傾向がある。
そうやって、チーム内の調和を尊重しているようだ。
なので、日本人が会議で”Yes”というときは、”その通りだ”という意味ではなく、
“聞いていますよ”という意味だ。
例② トラブルの対象法の違い
アメリカ人は、何かトラブルが起こった時に、発見者が上司に直接報告する。
しかし、日本人はトラブルが起こった時に、まず関係者同士で、
問題や対象方法について共有し合ったうえで、上司に報告する。
あるとき、アメリカ人がこの「掟」を知らずに、
直接アメリカ人の上司にトラブルを報告してしまった。
その上司は喜んだが、日本人の同僚は「掟」を破られたと当惑し、
結果的に、その上司は日本人の同僚から「しかと」されてしまった。
上司は何も情報が上がってこなくなり、どうしていいのか途方に暮れた。
2. 言葉の壁
ここでは、言語が違うこと自体の問題ではなく、
もっと深い問題が提起されました。
それは、
「言語のアクセントや流暢さが足りないことで、
話の内容そのものの質が低いとみなしてしまう傾向がある」
ということです。
例③ 言語が話の質をゆがめてしまったケース
アメリカ企業が日本市場に参入する際に、
日本人コンサルタントからレクチャーを受けたのだが、
そのコンサルタントの英語が流暢でなかったがために、
アメリカ人は「彼の話の質は低い」とみなしてしまった。
彼はとても専門的な話をしていたにもかかわらず。
相手の言語レベルに、我慢ができない人がいると、
チームプレーそのものが壊されてしまいます。
3. ヒエラルキーに対する認識の違い
ヒエラルキーをどれほど重んじるかも、文化によって異なります。
例④ アメリカと韓国の交渉時のケース
アメリカ企業と韓国企業が交渉していた際、
アメリカ側は韓国側から必要な情報が提供されないことに苛立っていた。
そこで、アメリカ側は、韓国側の交渉相手の上司に直接その不満を訴えた。
すると、その韓国側の上司はひどく激怒した。
そして、アメリカ側に対し、上位者に直接連絡してくることは無礼であり、
アメリカ側は自分と同クラスの上位者が連絡をしなければならないと、伝えた。
最終的に、アメリカ側の上司が韓国を訪問することで、
この問題は解決された。
4. 意思決定方法の違い
意思決定のための順序も文化によって異なります。
例⑤ 韓国とアメリカの意思決定の違い
アメリカ企業に勤めるブラジル人マネージャーは、
南米市場に向けた製品について韓国企業と交渉を行った。
1日目、両者は3つの詳細ポイントで合意。
2日目、アメリカ企業側が次のポイントについて話し合おうとしたところ、
韓国側は、また1日目の3つのポイントについて議論をしたいと言い始めた。
そして、アメリカ企業のマネージャーは、怒り心頭となった。
ここでのポイントは、韓国企業側は、全体像が理解できるまで、
詳細の合意ができないという、意思決定方法の違いだ。
アメリカ企業側が、いきなり詳細から入ってしまったため、
韓国企業側は、意思決定ができなかった。
この問題は以下のように解決された。
まず、アメリカ人側は、怒り心頭で堪え性のないマネージャーを、
会議から外し、会議後に随時報告する方式に切り替えた。
韓国側は、「詳細の前に、全体像を理解したい」とはっきり相手に伝えた。
そして、両者の交渉がスムーズになった。
では、どのようにすれば、多文化でのチームプレーは促進できるのでしょうか。
論文では、4つの方法が紹介されていました。
①受容: シンプルに相手の文化を受容する
→しかし、自発的な受容を期待できない場合がある。
②構造介入: 多文化構成の小グループをあえてつくり、自然と交流を促す
→しかし、関係が大きくこじれているとこの方法でも改善しない。
③マネジャーの直接介入: マネージャーが強権を発動し介入する
例)ある日本人とアメリカ人のいざこざに対し、当事者以外の日本人と
アメリカ人を集め、ワークショップを開催し、文化理解を図った。
→それでも、改善しない場合がある。
④退場: 問題児をプロジェクトから外す
様々な文化の人が集まるプロジェクトやビジネスでは、
このような対立が日常的に発生しています。
そして、今後、ますます日本の企業が海外に展開していくにあたり、
このような事例は増えていきます。
日本企業は、とかく、自文化を相手に押しつける傾向があるように感じます。
それは、自文化に誇りをもっていることの裏返しでもあります。
自文化でうまくいったからこそ、今の成長があり、そしてそれを海外にも
広めていくのだという発想は、理解ができます。
しかし、外国の人々とともに、海外市場を展開していくためには、
一度、自分のアイデンティティを引っ込め、相手の言い分やロジックに
耳を傾けることも大切です。
この論文を通じて、学んだことは、
多文化のプロジェクトでチームワークを促進するためには、
どちらの文化が正しいかを判断するのではなく、
そのプロジェクトそのもの力を最大限発揮するためには、
どのような新たな文化やルールを一緒に作るか、
を考える必要があるということです。
それが、多文化チームのマネージャーに求められる役割なのだと思います。
ピンバック: 【多文化コミュニケーション】バイアスを認識する | アメリカ・サンダーバードMBA留学ブログ
はじめまして、いつも読ませて頂いています。
ビジネスの話題も好きですが、バイアスについてはずっと意識してきたので、
今回の話題は非常に身近なこととして感じられました。
久しぶりに新しい視点を頂けて少し興奮しています。
これからも楽しみにしています。