【出張講義】ブランドマーケティング(Landor)


こんにちは。

今日の出張講義は、
世界で有名なブランドコンサルティング会社のひとつ、
Landorランドール)社の常務取締役(Managing director)、
Allen Adamson氏が、ブランドマーケティングについて、
講義を実施してくださいました。

最近、ブランドほにゃらら、という言葉がマーケティングの分野で流行っています。

ブランドマーケティング。
ブランドマネジメント。
ブランドマネジャー。
ブランド戦略。

また、似た言葉として、

プロダクトマーケティング。
プロダクトマネジメント。
プロダクトマネジャー。
プロダクト戦略。

というのもあります。

この両者は、同じことを指していることがほとんどです。
ときどき、ブランドを、複数のプロダクトを跨ぐ概念として、
使うこともありますが、
実務の世界でも、理論の世界でも、両者に大差はありません。

Adamson氏が、最初に強調していたのは、
「ブランドマーケティングは、理論はシンプルだが、実行は難しい」
俗に言う、言うは易し、行うは難し、です。

なぜ、言うは易し、行うは難し、なのかをAdamson氏は、
わかりやすく説明してくれました。

まず、ブランドマーケティングは、大きく2つのフェーズに分けられます。

1. ブランドを定義する
2. ブランドを浸透させる

それぞれのフェーズについて説明します。

1. ブランドを定義する

そもそもブランドとは何でしょうか。

ブランドというと、「高級で有名な商品を提供しているところ」
という一般的なイメージがあります。

しかし、マーケティングの世界では、「ブランド」とは、
広く、「顧客が他社の商品と区別するためのイメージ」
というような概念です。

高級である必要はなく、また伝統的である必要もなく、
いかに、顧客に良い方向に「違う」というイメージをもってもらうか、
これがブランドマーケティングです。

では、企業が自社ブランドを定義する際に、
何を意識しなくてはいけないのでしょうか。
ここでのキーワードは、「約束」と「目的」です。

1-1. 「ブランド」=「顧客への約束」

顧客に対して、「違う」というイメージをもってもらうには、
そのこだわりについて、貫き通す、約束を果たす、ことが重要です。
約束を果たせないブランドは、顧客から見放されてしまいます。

そして、約束する内容は、
「他社の約束とは違う」=ありきたりではない。
「シンプルでわかりやすい」
を満たしているほど、強いブランドを構築できます。

1-2. 「ブランド」=「ブランドや商品の目的」

なぜ、その商品は、そのようなブランド(約束)をしようとしているのか?
最近の顧客は、機能的な価値だけでなく、
その背後にある、思いや狙い、問題意識=「目的」への意識が高まっています。

機能的なブランド価値の遡求だけではなく、
その商品の「社会的目的」と「顧客への約束」をリンクさせることが重要です。

ブランド定義のフェーズにおいて難しいことは、
何をブランドと定義するか、です。
ブランドは定義するだけではなく、そこで約束したことを、
顧客にコミットし続けなければなりません。

すなわち、ブランド定義とは、
広告・販促において、キャッチーな言葉を決めることではなく、
商品の品質やサービスのオペレーションとセットではじめて成し得るものなのです。

2. ブランドを浸透させる

顧客にブランドを浸透させる中でのキーワードは、
「シグナル」と「経験」です。

2-1. 「ブランド浸透」=「シグナル」

ブランドを浸透させるために、広告という手段が用いられます。
TVCM, 交通広告, ビルボード, 商品パッケージなど、
人々の目に留まるところに、どのようなシグナルを送るかということが
大切です。

シグナルを効果的に届けるには、シグナルの内容もさることながら、
シグナルを送る場所も重要です。
他社が意識をしていないような場所、
たとえば、飲料メーカーは、ペットボトルの裏にメッセージを仕込んだり、
LG電子は、自社経営のカフェに製品を陳列したりと、
さまざまな工夫がされています。

シグナルなどは、これまで広告・販促で語られてきている分野でもあり、
今日の講義では多くは説明されませんでした。

2-2. 「ブランド」=「経験」

これは、1-1で説明した「ブランド」=「約束」と密接につながります。
商品は購入までの広告戦略のことではありません。

たとえば、購入後に製品を箱からあけるときに、その「ブランド」を感じるか、
取扱説明書を読むときに、その「ブランド」を感じるか、
カスタマーセンターに問い合わせたときに、その「ブランド」を感じるか、
顧客とのすべての接点において、その「ブランド」を顧客に連想させる
ことができているかどうか、
これが、ブランドを顧客の「経験」によって浸透させるということです。

例えば、Apple社。Think different という企業ブランドがあります。
iPodやiPad, iPhoneがデザインに優れているのは、もちろんのこと、
製品パッケージ、ホームページ、アップルストアなど、
製品とは直接は関係していないところでも、
Think differentの精神を感じ取ることができます。

冒頭に説明した、言うは易いし、行うは難し。
ブランドマーケティングは、単に広告・販促戦略なのではなく、
また、商品開発から販売までの戦略でもなく、
商品にかかわる全てのオペレーションを含めて、
実施していく必要であり、そこが一番、困難を極めます。

例えば、アメリカ企業は、新たな概念を構築することは得意ですが、
従業員オペレーションの徹底はスムーズには進みません。

一方、日本企業は、ひとつの価値観に全社従業員を向かわせることは
得意ですが、
効果的なブランドを定義することはあまり得意ではありません。
もしくは、広告・販促として斬新なブランドを作り出すけれでも、
オペレーションとブランドが乖離していることも多々あります。

両者をうまく統合させることができたブランドが、
真のブランドなのです。


カテゴリー: MBA講義内容 タグ: , , , , , , , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>