【マーケティング】顧客満足度モデル Alpen Bankのケース


こんにちは。

今日のマーケティングクラスでは、
先週に続き、顧客満足とロイヤリティがテーマでした。

とりわけ、さまざまなモデルについての説明がありました。

使ったリーディングはこちら。

Rangan, Kasturi V., and Sunru Yong “Alpen Bank: Launching the Credit Card in Romania.” Harvard Business Publishing: 4559, May 2010.

■ ベースモデル

顧客満足度のモデルには大きく2つのベースモデルがあります。

1. ギャップ・モデル

これは、購買行動についてのサーベイをとり、
「顧客期待」と「実際の商品・サービスの質」とのギャップから、
顧客満足度を図るという、非常に一般的なモデル。

ただし、このモデルには弱点があります。

‐ 商品・サービスの質の絶対レベルを無視してします
‐ 顧客期待というあいまいな定義に依存してしまう
‐ 1回の購買行動にフォーカスしすぎており、顧客行動の背景となった
  「態度」が無視されてしまう

これを克服しているのが、次のモデルです。

2. パフォーマンス・モデル

これは、顧客の購買行動全体をとらえ、
購買回数や購買金額から、顧客満足度をとらえていくモデルです。

そして、商品・サービスの質を向上させることは、
顧客満足度を向上させます。
さらに、顧客期待を高める、すなわち、
顧客が抱く商品・サービスに対するイメージを高めることは、
顧客に「良い商品・サービスが提供された」という感覚を与え、
結果、顧客満足度を向上させることにつながります。

このモデルでは、購買行動後のサーベイ以上に、
実際の購買行動データそのものを重視する考え方でもあります。
実際の過去データから、質や期待を推量していくのです。

「商品・サービスの質」の向上と「顧客満足度」の向上の連関性を調べるためには、
細かい分類ごとの質のレベルと、その分類の質と満足度の影響度を、把握していきます。
それは、どれだけ特定の項目の質が高くても、影響度合いの低い場合は、
結果的に顧客満足度に貢献しないからです。

改善すべきは、「影響度が高く」、「質が低い」項目です。

■ 狩野モデル

製品・サービスの質を、以下の3つに分類し、効果的な向上策を発見する方法です。

1. 魅力的品質要素: 不十分でも不満を与えないが、十分だと満足される品質要素。
2. 一元的品質要素: 不十分だと不満を与え、十分だと満足される品質要素。
3. 当たり前品質要素: 不十分だと不満を与えるが、十分でも満足されない品質要素。

つまり、質が低いからといっても、当たり前品質の内容を極限まで上げ続けても、
効果が出ず、むしろ当たり前品質の内容は一定水準レベルでとどめておき、
魅力的品質要素の向上にリソースを投入すべき、という考え方です。

■ 攻めと守りの戦略

対顧客戦略においては、以下のように戦略を分類することができます。

1. 攻めの戦略(≒新規顧客獲得)
  1-1 マーケット全体を拡大する
  1-2 マーケットシェアを向上させる

2. 守りの戦略(≒既存顧客維持)
  2-1 他社への乗り替え障壁を高める
  2-2 顧客満足度を高める

一般的には、新規顧客獲得に比べ、既存顧客獲得のほうが
コストがかからないと言われています。
それは、既存顧客を失うことは、
① 新規獲得のために再度コストがかかる
② その顧客からの売上を失う
ことを意味し、二重に利益を損ねるためです。

また、既存顧客を維持すればするほど、大きな見返りが得られます。
例えば、
既存顧客維持率75%の場合、毎年25%を失い、4年後に顧客がいなくなる
既存顧客維持率80%の場合、毎年20%を失い、5年後に顧客がいなくなる
既存顧客維持率85%の場合、毎年15%を失い、6.7年後に顧客がいなくなる
というように、
75%→80%→85% と同じ幅向上するごとに、顧客維持年数を
4年→5年→6.7年 と二次関数的に向上させることができます。
これは、「顧客維持効果 Retention Economy」と呼ばれています。

■ TORA公式

顧客満足度の予測のモデルが、個人の愛着度に焦点を当てるものが多いのに対し、
周囲からのプレッシャーも考慮に入れたのが、TORA公式です。
TORA = Theory of Reasoned Action

TORA公式では、顧客満足度を以下のように定義し、計算します。

顧客満足度は、具体的な顧客の行動動機を把握することで、予測ができる。

行動動機度 = w1 × 個人の指向性 + w2 × 周囲からのプレッシャー(期待)
w1, w2 = 加重平均のための係数。例えば、女子高生など購入に対して周囲の目を
      気にする場合は、w2の割合が大きくなる。

個人指向性 = 「項目毎の重要度 × ある商品に対するその項目毎の個人的評価」の項目総和
 (項目とは、軽さ、速さなどの商品の特徴)

周囲のプレッシャー = 「周囲毎の配慮度 × 商品の項目毎の周囲評価」の周囲総和
 (周囲とは、家族、友達、同僚など。例えば、女子高生は友達への配慮が高い)

この公式を用いることで、
そのマーケットの顧客の文化的特性を考慮に入れたうえで、
顧客の購買動機を推計し、結果的に顧客満足度を予測することができます。

■ Alpen Bank(アルペン銀行)のケース

アルペン銀行は、ルーマニアにある実際の銀行です。
この銀行が、クレジットカード市場をルーマニアに開設すべきかどうか
という決断をするに際し、
どのような顧客獲得手段を使うべきかという内容でした。

考えられる手段としては、
‐ ダイレクトメール: 安いが、1通当たりの効果薄い
‐ パンフレット: 同じく安いが、ターゲットを絞れない
‐ 折り込み広告: 安いが、読者の目に止まらない
‐ セールスマン直販: 効果高いが、コストも高い
‐ ターゲットの銀行来店時に対面紹介: 効果高いがコストもかかる
があります。

これを、それぞれの、単価、潜在リーチ数、ターゲット率、反応率、顧客化率など、
実際の数値から、1新規獲得当たりの単価を算出し、意思決定をするという
ケースです。

ケーススタディは、質的、概念的な内容のものが多い中で、
実際には量的な考慮をすることで、妥当な決定ができるという
示唆を与えてくれました。


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