【マーケティング】顧客満足とロイヤリティ Starbucksのケース


こんにちは。

今週のマーケティングクラスでは、
スターバックスのケースを用い、
顧客満足とロイヤリティについて講義およびディスカッションを行いました。

使ったリーディングはこちら。

Moon, Youngme, John Quelch, “Starbucks: Delivering Customer Service.”
Harvard Business School: 9-504-016, 2006

Reinartz, Werner, V. Kumar, “The Mismanagement of Customer Loyalty.”
Harvard Business Review: Jul. 2002

Reichheld, Frederick F., “The One Number You Need to Grow.”
Harvard Business Review: Dec. 2003

■ スターバックス

スターバックスはアメリカで60%以上のシェアを誇る大成功企業です。
第1号店はシアトルのパイクプレイスマーケット。1971年のことです。

創業者は、スターバックスの設立時に世間から猛反対を受けました。
「イタリアコーヒーが紙コップで$1で飲める。ドーナツショップでは50セント。
 それにアメリカ人はコーヒーなんて飲まないよ。冗談はやめてくれ。」

創業者はこの批判を完全に無視。今では世界中で成功しています。

スターバックスの主要な成功要因は3つ挙げられます。

1. 世界中から豆を取りよせる高品質なコーヒー
2. 丁寧で顧客とのコミュニケーションを積極的にとる店内サービス
3. リラックスできる雰囲気

それまでコーヒーショップと言えば、寡黙そうな親父さんが、
黙々とコーヒーを入れ続け、少し固い雰囲気のイメージでしたが、
このイメージを完全にぶち壊すコンセプトでした。

スターバックスはコーヒーを提供する飲食店ではなく、
雰囲気や場所を提供するサービス企業へと軸の舵を切ったのです。

スターバックスの店員は、社内では”パートナー”と呼ばれています。
上級管理職は全員一度は入社後最初パートナーを経験することになります。
ファイナンスだろうと、ITだろうと、全員です。
それだけ、このパートナーがスターバックスにとっての中心であると
考えられており、従業員満足→顧客満足であるととらえられています。
結果、パートナーの離職率は、業界平均が300%であるのに対し、
70%と1/4以下の水準なのです。

ビジネスの肝である顧客へのサービス品質を向上することは、
徹底されており、少しでも顧客との会話を持つことが奨励されています。
その中で、顔馴染みの客に対して、一歩先を行くサービスが
提供されています。

パートナーのサービスレベルは、厳しくチェックされており、
1. サービス(発声やアイコンタクトは適切か?)
2. 清潔さ(店舗は清潔か?)
3. 商品の品質(分量や温度は適切か?)
4. スピード(商品をスピーディに提供されているか?)
の基本サービス4項目に加え、
5. 顧客が再度来訪したくなるような雰囲気がつくれているか?
の「高級感のあるサービス」をチェックされています。

そのスターバックスの大きな課題は、
サービスや商品を顧客に合わせカスタマイズしていけばいくほど、
スピーディーなサービス提供ができなくなる、というものです。

1店舗当たりのパートナーの数を増やし、品質とスピードを双方
挙げる案が出ていますが、CFOの目線からは、
「それで本当に利益が上がるのか?」
と疑問の声も出ています。

このケースは、どのように顧客満足と利益がどのようにつながって
いるのか、ということを考えさせるものです。

一般的には、サービス品質向上の結果、リピーターが増え、
その増加リピート率の分だけ、売上が上昇する。
従業員増加によるコストと、売上上昇分の差額がプラスであれば、
実施すべきと考えられます。

では、サービス品質向上の結果、リピーターはどの程度増えるのか。
この問題をどう考えていくべきか、これが今週のテーマでした。

■ ロイヤリティは利益になるか?

Auh教授は、一般的に言われている、
従業員満足→顧客満足→ロイヤリティ向上→利益増加
は本当に正しいのか?というところから出発しました。

リーディング課題のひとつであった、
“The Mismanagement of Customer Loyalty”では、
アメリカの通販企業、フランスの小売食品店、ドイツの証券会社を対象に
実証サーベイを実施した結果、
ロイヤリティ向上→利益向上の相関関係は見られなかったと発表しています。

それは、ロイヤリティのある顧客は、利益率が低いということが原因でした。

通説1: ロイヤリティの高い顧客はコストが低い
→実際は、関係継続のために高いコストを支払っている

通説2: ロイヤリティの高い顧客は値段が多少高くても買ってくれる
→実際は、ロイヤリティの高い顧客ほど、値下げ圧力がかかる

通説3: 購入頻度の高い顧客は、関係が長続きする
→実際は両者は無関係。例えば、週1回の老婦より、
 毎日通う主婦のほうが、常に安い店を探している。

このことから、顧客セグメントを、
「関係継続期間」×「利益率」の2軸で対応を変える必要があると
主張します。

期間Long×利益率High = True Friend 真の友
→ タイミングを合わせてコンタクトを取る。

期間Short×利益率High = Butterfly 蝶(蝶のようにフラフラ)
→ コンタクトを増やし、長期顧客になるよう努める。

期間Long×利益率Low = Barnacle フジツボ
→ 購買余力があれば購入品目を増やし、
  購買余力がなければ、リレーションコストを削減する。

期間Short×利益率Low = Stranger 知らない人
→ 投資しない。

一般的には、ButterflyとBarnacleが顧客の大半。
True Friendはあまりいないので、
ロイヤリティ向上と利益率向上が結びつかないのです。

■ 顧客満足度はどのように測定するか?

また、エンタープライズというレンタカーショップの取組を題材に、
顧客満足サーベイの取り方の講義もありました。

“The One Number You Need to Grow”では、
既存のサーベイが、設問数が多すぎ、焦点を失っていると主張します。
これは、調査会社が利益を増やすため、不必要に設問数を増やして
いるとまで書いています。

エンタープライズでは、顧客満足度を測定するために、
「再度購入したいですか?」という質問はしません。
替わりに、「弊社のサービスを他の方にお勧めしたいですか?」
という質問をします。

これは、本人が気に入っていても、再度利用する可能性低いことが
あるためです。
例えば、すでに転居が決まっている、耐久財なので当分買い替えない、
趣味が変わってきた、贈答品だ。などなど。
他人への推薦具合を聞くことで、顧客の満足度を的確に図ることができます。

一方、「満足しましたか?」という質問でもよいように思いますが、
こちらは、質問内容が抽象的すぎて、顧客が直感的にこたえることが難しく、
やはり上記の「弊社のサービスを他の方にお勧めしたいですか?」の
ほうが、的確なフィードバックを受けられると判断しているようです。

実際に、他の企業でもどうようにサーベイ実験を行ったところ、
「弊社のサービスを他の方にお勧めしたいですか?」と顧客の増加数は、
もっとも相関関係が高いという結果も出ています。

また、講義の中では、ロイヤリティの種類として、

‐ 姿勢的ロイヤリティ
  (好きだと言っている。実際に行動するかは不明。)
‐ 行動的ロイヤリティ
  (とりあえず購入している。本当に好きかどうかは不明。)

の区別を理解する必要があることも説明されました。

最後に、スターバックスの話で締めくくりたいと思います。

スターバックスは、アメリカだけでなく、アジア、ヨーロッパ、南米でも
成功をおさめています。
が、唯一大きく失敗したのは、オーストラリア市場です。
シェアはいまだに10%を超えず、店舗の撤退も相次いでいます。

原因としては、
‐ オーストラリアは昔ながらのコーヒーショップが盛んで、
  カジュアルなスターバックスは好まれない
‐ カプチーノやエスプレッソの人気が高く、スターバックスの
  ラインナップは人気がない
‐ それにもかかわらず、急展開をしすぎた
が挙げられます。

ただ、いずれにしても、スターバックスは非常に成功した企業であることには
変わりはありません。


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