グローバルMBAから見たアベノミクスと日経平均株価

自民党安倍政権の登場を機に、注目されている「アベノミクス」。

Wikipediaでは、アベノミクスを以下のように定義しています。

アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを基本方針としており、安倍はそれを「3本の矢」と表現。
個別の政策としては、2%のインフレ目標、円高の是正、政策金利のマイナス化、無制限の量的緩和、大規模な公共投資(国土強靱化)、日本銀行の買いオペレーションによる建設国債の引き取り、日本銀行法改正などが挙げられる。

アベノミクスが日本の経済を成長させるか否か。
この問いを図る指標として、複数のものが挙げられます。

1) 実質GDP
2) 名目GDP
3) 日経平均株価
4) 実質賃金
5) インフレーション率

この中で、特に最近注目されているのが日経平均株価です。
安倍政権誕生以降2月まで日経平均株価が上昇し続けたことに対し、
「アベノミクスの成果」だと評価されていることをよく目にします。

日経平均株価の回復と常に並んで語られるのが円安です。
「円安⇒輸出関連株の買い⇒日経平均株価の上昇」という考え方です。

そこで、まず、実際の日経平均株価の推移を見てみましょう。

日経平均株価とアベノミクス

日経平均株価とアベノミクス

サブプライムローン危機に端を発した2007年の株価下落。
リーマンショックからの回復後も緩やかに株価は低迷を続けた後、
2012年11月から株価が継続して向上しているのがわかります。
これが「アベノミクスへの期待による株価上昇」と言われている所以です。

しかし、あらためてじっくり考えたい点としては、
「円安⇒輸出関連株の買い⇒日経平均株価の上昇」を深く考えるということです。

円安ということは円の価値が下落しているということ、
すなわち、円建てで表現されている日経平均株価の価値も下落していることになります。
同じ「9000円」でも、円安になると価値は下がっていきます。
特に海外の投資家からすると、米ドルの投資価値としてみた場合、
日経平均株価の資産価値評価としては、為替を勘案する必要が出てきます。

そこで、米ドル建ての日経平均株価の表をまとめてみました。ご覧下さい。

米ドル建て日経株価平均時系列データ

米ドル建て日経株価平均時系列データ

米ドル建ての日経平均株価は、円建ての日経平均株価に比べ、
全体の増減傾向が小さいことがわかります。
特に2009年後半以降現在にいたるまで、USD120前後を上下しており、
安倍政権誕生後の大きな回復という傾向もかすれてしまいます。

米ドル建てで見ると、日経株価平均の上昇は、円安による価値下落と相殺され、
傾向値が小さくなっているのです。

こうしてみると、11月以降の日経株価平均の上昇は、
「円安⇒輸出関連株の買い⇒日経平均株価の上昇」だけでなく、
「円安⇒日経平均株価の相対的な上昇」とも読み取れ、
アベノミクスへの期待による「日本経済回復シナリオ」に対する
懐疑的な見方を提供してくれます。

また、経済がグローバル化している中、
一国の株価の推移は、他の大国の株価の推移と連動してもいます。

そこで、最後にアメリカの代表的な指数であるS&P500 Indexを見てみましょう。

S&P500 Index時系列データ

S&P500 Index時系列データ

S&P500は、サブプライムまでほぼ一貫して上昇し、
リーマンショック後には、多少揺れながらも右肩上がりで回復している姿が
見て取れます。

ドル建ての日経平均株価がさほど右肩上がりではないのと対照的です。

経済が大きくグローバル化し、マネーが国境を超えて動く中、
指標を「どの通貨建てて見るのか」ということはとても重要です。

冒頭に記した経済成長の指標も、日本国内ではすべて円建ててで語られます。
しかし、その円そのものの価値が動いているということも忘れてはいけません。

ドル建てで見た場合のアベノミクスの効果はまだ出てはいません。
実際に、アベノミクスによる経済政策・金融政策は開始されてはいません。

世界のマネーがアベノミクスをどのように見つめているのか、
円建てだけでなく、ドル建てでの指標チェックを重要性を今回は指摘させて頂きました。

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ThunderbirdがBusinessweekの調査で世界No.1!

母校Thunderbird School of Global Managementは、
Financial TimesとUS Newsによる「国際ビジネスマネジメント」の分野で、
連続してNo.1の評価を獲得してきましたが、
今回、今年から新しく始まったBusinessWeekの「国際ビジネスマネジメント」
の世界ランキングでも、世界トップに選ばれました!

BusinessWeek “Top Schools for International Business”

1. Thunderbird 5.78
2. INSEAD 5.69
3. IMD 5.55
4. London Business School 5.45
5. Georgetown (McDonough) 5.39
6. IE Business School 5.36
7. USC (Marshall) 5.35
8. South Carolina (Darla Moore) 5.32
9. IESE Business School 5.27
10. Cornell (Johnson) 5.19

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ユニクロのスタンフォードMBA奨学金

ユニクロを展開するファーストリテイリング社が、
2013年から2年間、スタンフォードMBAの入学者への奨学金を提供する
プログラムを発表しました。

ユニクロ、米政府と協働で日本人学生の留学支援 – 奨学金最大160万ドル

選抜されると、1人につき1000万円以上支払われる模様です、
条件として、卒業前に、ユニクロのインターンシップに参加しなければなりません。
http://www.usjapantomodachi.org/tomodachi-e-tomodachi_uniqlo_fellowship-Stanford.html

今回の奨学金プログラムは、
東日本大震災後に日米両政府が立ち上げた官民による
教育支援事業「TOMODACHIイニシアチブ」の一環。

MBA留学には大きな予算が必要です。
スタンフォードMBAを希望する方はぜひご検討下さい。

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MBA後の英語力は衰えていく

MBA卒業し、日本に帰国してからもう8ヶ月経ちました。

MBA留学のメリットとして挙げられる英語力。

「MBA留学したって、英語力はそんなに上がらない」という人もいますが、
それは、きっと留学中に日本人の友人や家族との時間をとり過ぎて、
日常的に英語を使う努力をしなかったからかなと思います。

僕はMBA留学では十分に挙げられると思っていますし、
自分は今では英語に不自由はしていません。

ところが、問題は帰国後です。

日本にいると、当然ながら、ほとんどの生活は日本語ばかり。
テレビも友達との会話も、家の中の会話も、読む書類もみんな日本語です。
ここで問題となるが、
「帰国後に英語をどうやって維持するか」です。

僕の場合も、帰国した直後にこんな悲しい出来事がありました。

日本に戻ってきて2日後、
あるアプリケーションの操作を教えてもらおうと、
台湾系カナダ人の友達と帰国後スカイプで話をしていたときのこと、
彼女は第一声こう叫びました。

「Kenji、どうしたの??発音が日本語訛りになってるよ!?」

これは僕の油断でした。
日本に戻ってきて実家にいながら、
両親とずっとこてこての日本語で会話をしていて、
すっかり、英語の発音を忘れ、日本語訛りになってしまっていたのです。

わずか2日で、友人から指摘されるほどの退化っぷり。
これはまずいなと思いました。
やっぱり英語は使い続けないと衰えると身をもって痛感しました。

そこで、週に一度は、海外の友人と英語でスカイプで話す機会を作りました。
言語は、使い続ければ続けるほど、どんどん慣れていきます。
週に1度でも、英語を数時間使うチャンスを作ったことで、
そのあともどんどん英語力は磨かれ、
今ではアメリカにいたときよりも、英会話は上達していると感じます。

例えば、日本に帰国してから1ヶ月後の3月に、
友人に頼まれて、会議での日英、英日の逐次通訳の機会を得ましたが、
自分でもびっくりするぐらい、なんとかなりました。

MBAでせっかく身につけた英語も、使い続けないと退化してしまいます。
維持するためには、話す機会。

これから留学される方は、ぜひ帰国する前に、
定期的に話ができる友人を作っておくことをお勧めします。

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「現実を視よ」を読んで満足していてはいけない

今日、MBA留学を考えているという大学時代の後輩とランチをしました。
ファンドで働きつつ、仕事に疲れてしまったので、
新たな道を模索しようとMBA留学を考えているという相談でした。

彼もこれまで海外に住んだことがなく、
家族を含めて海外で生活をしてみたいという希望もあるとのこと。
このように、日本人が海外での生活を「考え始める」とういことが、
徐々に増えてきているように感じます。

10月に入ってから、ファーストリテイリング会長・柳井正氏の
現実を視よ」という本を読みました。
この本の中で柳井氏は、日本企業や日本の若者が海外市場にチャレンジをせず、
いつまでも日本国内に「かじりついて」、
挙げ句の果てに国の借金に頼るようになってしまっていると、
檄を飛ばしています。

柳井氏は、このような「国外へ出ろ」という論調の本を
最近、立て続けに書いています。
ガイアの夜明けなどでも、
日本企業の海外市場での状況について取り上げることが多くなりました。
国を出るという選択肢を、好むと好まざるとを関わらず、
考えるようになった時代なんだと思います。

しかしながら、
実際に自発的に国外に出る選択する人は多くないように感じます。
「現実を視よ」を読んで、
「やっぱり国内にいてもダメなんだ!」と言えるようになったり、
テレビを見ながら、
「日本企業のやり方じゃ、外じゃ通用しないよ」と言ってみたり、
そういうように「語れる人」は増えてきていますが、
では、いつどのように海外へ出るつもりかという
具体的な計画はあまり耳にしません。

先月、台湾に4週間行ってきました。
日本では台湾企業の勃興ぶりが多く取り上げられていますが、
台湾国内経済は、
「失われた10年」と呼ばれるほど、不景気が続いています。

台湾の書店に、
「現実を視よ」のような「マインドを語る」本はあまりありません。
それよりも、台湾の若者は、
台湾から中国に渡って成功した起業家の本を読みながら、
「いつか国外で成功してやる」と目を輝かしていたり、
台湾人の多くの友人は、中国やアメリカで普通に仕事を始めています。

友人に連れられて、台北で、
台湾人の起業を夢見る若者が集まるカフェに行ってきましたが、
一人の学生がしきりに英語で僕に話しかけてきました。
大学を卒業したら、映画の学校に通って、
ショートムービーの会社を始めたいとのことです。
いつかアメリカにも行きたいので、
英語を自力で練習しているとのこと。
彼も、海外での生活に向けて具体的なアクションをしている人の一人でしょう。

台湾では、柳井氏の本はたくさん翻訳されています。
大前研一氏との共著「この国を出よ」も台湾、中国で翻訳されていますが、
一番人気は、「一勝九敗」。
UNIQLO躍進の秘訣を、台湾人や中国人の若者は、必死に吸収しようとしています。
ちなみに、大前研一氏の「企業参謀」も人気。
最近、三枝匡氏の「戦略プロフェッショナル」も台湾で翻訳されました。

日本人が「現実を視よ」を読んで、
「やっぱり日本はもうだめか」と飲みの場で語っている間に、
アジアの若者は、
海外で成功する方法を、行動や読書を通じて必死に吸収しています。
「現実を視よ」を読んで満足することなく、
次の一手を自分の中で、打っていってほしいと願っています。

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文部科学省の留学費支援プログラム

今日の日経新聞ウェブ版に、「留学費、大学生・院生1万人を援助 来年度概算要求
という記事が出ていました。

日本人の留学生数を増やすために、
長期留学は月14万8千~8万9千円、短期留学は月8万円が支給されるというものです。

但し条件として、
「費用の援助を希望する学生は直接または大学を通じて日本学生支援機構に申請する」となっています。
つまり、申請時に学生以外の方は申請できないプログラムです。

アメリカやイギリスのMBAに応募する際には、
3年程度の職務経験が入学の条件となっているケースが多く、
残念ながら、アメリカやイギリスのMBAプログラムに応募する方は、
今回の支援金は得られません。

しかしながら、現在、卒業後にすぐに経営学の留学を考える方にとっては朗報です。
現在、アメリカ、イギリスでは、MBAの他に、
MS (Master of Science)の経営学修士コースが充実してきています。
MSの受験には、職務経験は必要ではありません。

また、最近では、アメリカのMBAプログラムでも、職務経験が不要の学校が増えていきています。

資金面で留学を躊躇されている学生の皆さんは、
今回のプログラムの詳細をしっかり確認した上で、MSプログラムや職務経験不要のMBAプログラムを
ぜひ探してみてください。

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シャープと鴻海精密工業の提携交渉が教えてくれるもの 〜グローバルビジネスの文脈〜

最近、シャープと鴻海精密工業の提携の話が、
日経新聞などで大きく取り上げられるようになりました。

皆さんは、この鴻海という会社をご存知でしょうか?

鴻海は、郭台銘(英語名Terry Gou)現会長が、
彼がまだ24歳だった1974年に台北市郊外の土城区に設立した台湾メーカーです。
設立当初は、従業員わずか10名。テレビのプラスチック部品から始まりました。

彼は1988年にまだ発展途上だった中国へ生産拠点を移転していくことを決断。
1990年代から、日本では「中国は世界の工場」と言われるようになりましたが、
実際に中国を世界の工場に押し上げていった立役者は、
こうした台湾企業・台湾資本だったりします。

その後、大手メーカーから生産を受託するEMSという形態で世界の覇者となり、
話題のiPhone, iPod, iPad, NintendoDSなど、
世界で新たな文化を築いた製品は、鴻海によって生産され、
世界に送り出されてきました。

その鴻海は、郭台銘会長のもとで大きな企業グループを形成しています。
鴻海グループの名称は、鴻海科技集團。英語でHon Hai Technology Groupです。
Hon Hai(ホンハイ)というのは、「鴻海」の中国語読みで、
そのため、最近日本でも「ホンハイ」というカタカナ表記をされることもあります。
中国語を習っている方は、鴻海のピンインはHong Haiじゃないのかと
言われるかもしれませんが、なぜHon Haiとしたのかは、よくわかりません。

その中核となる電気・電子産業を扱っている会社が、
鴻海精密工業(台湾での名称は「鴻海精密工業股份有限公司」)です。
英語名は、Hon Hai Precision Industry。
今回のシャープへの資本参加で取り上げられている企業です。

鴻海精密工業は、台湾の外では、”Foxconn”という企業ブランド名で活動をしていたため、
海外では、Foxconnが企業名として語られることも少なくなりません。
また、このFoxconnに相当する中国語名もあり、それが富士康科技集團です。
ややこしいですが、
鴻海精密工業=Foxconn=富士康科技集團
と理解してしまって、大丈夫です。

世界における鴻海精密工業のポジションを見るために、
世界の主要な電気メーカーの時価総額(6/29末時点)を円建てで比べてみました。
※単位:百万円

鴻海精密工業の時価総額は、日本の主たる電気メーカーの時価総額より高く、
今回提携相手のシャープと比べると、約5.8倍の差です。

さらにアジア勢では、韓国のSAMSUNG、台湾の半導体製造会社TSMCが、
鴻海の時価総額を遥かに超えています。

SAMSUNGとスマートフォン戦争を繰り広げるAPPLEや、
世界の総合電機メーカーGEは、さらにその上を言っています。

TSMCや鴻海以外の台湾勢もその存在感を増しています。
携帯電話メーカーのHTCは、富士通を超え、ソニーを狙っています。
PCメーカーのASUSも、シャープを超え、さらにAUOやACERも後ろに控えています。

では、そのような台湾企業が絶好調なのかというと、
実はそういうわけでもありません。

これは鴻海精密工業の株価推移です。
2007年までは世界の好景気に合わせて株価は上昇したものの、
サブプライム問題、リーマンショックで、株価は下降し、その後低迷。

鴻海は自社ブランド製品製造ではなく、OEM生産のため、
ブランド保有メーカーの販売が落ち込むと、自ずと売上が減少してしまいます。
そのため、鴻海にとっての大きな経営課題は、
「上昇する深圳の人件費に対処するため生産拠点を中国内陸部へシフト」
「自社独自の能力を向上させるための技術力の確保」です。

この今回の技術力確保の命題は、かつてのSAMSUNGを彷彿させるものがあります。
SAMSUNGは、1990年代から、
従来のOEM生産ではない、自社の技術力向上へと大幅に舵を切り、
アジア通貨危機後には、その方向性を強めていきます。
自社のR&Dに莫大な投資をし、日本の電機メーカーの従業員を引き抜いたりもしました。

今回、SAMSUNGに対する対抗心を明確にする鴻海は、
この技術力向上をスピーディーにシャープとの提携によって実現しようとしています。
これが、鴻海がシャープ提携に託す狙いです。

一方で、シャープの狙いは何でしょうか。
シャープの経営状況はあまり芳しくはありません。

シャープは数年前までは、「液晶のシャープ」というブランドで、
液晶パネルや液晶テレビで天下を築き、
「シャープ亀山工場」は、日本国内への製造業拠点回帰の象徴とも言われました。

そのシャープは、2012年3月期の決算で、
売上高が3兆219億(2011年3月期)から2兆4558億(2012年3月期)と大幅にダウン。
当期純利益が194億(2011年3月期)から、マイナス3760億(2012年3月期)へと大赤字へ転落。
特に、「液晶のシャープ」だったはずの液晶パネルと液晶テレビのAV機器は、
大きく売上を落とし、営業利益が大きな赤字となっています。


※出典:シャープ「決算補足資料

シャープは、ここ数年、電子部品を主戦場と捉え、
設備投資を電子部品事業に集中させてきました。
(設備投資のうち81.4%が電子部品事業への投資)
しかし、その事業で赤字となっているため、改善が急務となっています。

この状況の打開策として、シャープは経営戦略として2つの柱を発表しています。
※出典:シャープ「経営戦略説明会」資料

1. 鴻海精密工業(鴻海科技集團)との提携
  - スマートフォンの製造単価を削減し中国市場を開拓
  - 液晶パネルを生産する堺工場(堺市)の運営子会社への出資要請
  - (記載はないが)シャープ本体への出資も要請(9.871%)
2. ユニーク商品の創造
  - 会話ができてプラズマクラスター搭載のお掃除ロボット(ルンバと同種)

この中で、同時に海外売上比率をさらに高めて行くという計画と合わせて考えると、
特に、上記の戦略1が最重要であると言えます。
これが、シャープが鴻海との提携にかける狙いです。

日本にいると、国内勢のシャープの打開策として取沙汰されるシャープと鴻海との提携。
しかし、グローバルの観点から見ると、
鴻海とSAMSUNGとの間で繰り広げられるグローバル競争の中に、
シャープが巻き込まれているとも言うことができます。

シャープにとって、すでに世界で巨大な存在となっている鴻海との提携は、
自らの技術やリソースを世界市場に展開するための強力な手段となりえます。

グローバル企業へと転じていくパートナーとして鴻海をとらえるか、
資金を提供してくれて生産コストを削減するパートナーとして鴻海をとらえるか、
はたまた、技術力の低い相手に対しての先輩・後輩という見方で鴻海をとらえるか。

日本企業のグローバル化にとって重要なテーマを、
このシャープと鴻海の提携は示してくれているように思います。

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日本企業が推進できないグローバル人事体制〜出向制度が阻むもの〜

日本に帰国してから、以前の仕事柄、
日本の大手企業のグローバル人事制度について、
友人から話を聞いたりする機会が多くあります。

しかし残念ながら、うまくいっていないケースの話を耳にすることが多いです。

例えば、先週、日本を代表する大手総合商社のグローバル人事を担当している友人は、

「基本的に海外でも日本語の話せる外国人しか採用していない」
「日本人と外国人の人事制度は分断していてグローバル規模の戦略的異動はできない」
「優秀な外国人は早く辞めていく」

と話していました。

総合商社といえども、社内のHRがグローバル体制にはなっていないと嘆いていました。

一方で、欧米企業のグローバル企業では、
国から国へと渡って昇進・昇格をしていくというケースが少なくありません。

どこにそのネックがあるのでしょうか。
僕は、そのネックは、
日本の「本社中心人事制度」にあるのではないかと思っています。

日本は高度経済成長期の頃から、本社中心のHR体制を作ってきました。

大きな会社では、子会社から本社へ異動することはまずありません。
本社から子会社への異動はありますが、
多くは年を取ってからの片道切符で、最終的には給与削減前提での転籍となります。

もちろん、最近では、若手の子会社への出向も増えてきました。
その場合は、日本特有の「出向」という制度を使います。
出向では、グループ本社と子会社の人事制度の不一致を気にすることなく、
従業員を子会社へ異動させることができる便利な制度です。

出向の際には、グループ本社と子会社の給与格差分は、本社が負担したり、
ときには、給与をグループ本社と子会社で折半して出し合って、
出向の受け入れを容易にしたりします。
しかしながら、子会社から本社への出向という話もあまり聞きません。

このように、日本では、グループ本社の給与水準を高くし、
そこから低いところへ流れて行く仕組みを作ってきました。
そして、この「低いところ」を作るためにも、分社化して子会社を作るということも
行ってきました。

このように「本社から低いところへ」という流れと、
グローバルHR体制の考え方とは相容れないところがあります。

例えば、日本の海外法人(特にアジア諸国)では、
アジア諸国子会社の給与は
日本のグループ本社の給与より低いことを前提に作られています。
そこに派遣される日本人社員は、「出向」という便利なシステムを使い、
本社の人事制度や給与水準を維持したまま、海外へ赴任します。

つまり、この流れは、これまで日本企業が何十年と培って来た
「高みのグループ本社から子会社へ」という考えた方を転用して運用しているのです。

このような状況で、
グループ内で、外国人社員も含めたグローバル異動システムを作るには、
日本のグループ本社で外国人を採用しなければなりません。

しかし、その前には、
「わざわざ外国で働く社員をなぜ日本の本社で採用しなければならないのだ」
「アジア子会社は人件費コスト削減のために作ったのに、なぜ人件費を上げるのだ」
「日本採用するのであれば、日本語が話せることが前提だ」
という反対が待ち受けています。

また、グローバルでグループ従業員を企業をこえて異動させるには、
グループ企業を上下関係ではなく「同等」に見て行く必要があります。
しかし、これまでグループ本社中心のHR体制を培ってきた日本企業では、
グループ本社と海外事業子会社を「同等」に見ることがすんなりとはいきません。

一方、以前、僕の顧客であったフランス大手自動車部品メーカーは、
「日本の従業員がどんどんフランス本社に引き抜かれるので、採用活動が終わらない」
と嘆いていました。

これはこれで、日本法人からすると可哀想な話ですが、
このメーカーではグローバル規模の異動がすんなりできてしまう、
しかも海外現地採用の従業員をグループ本社にすぐに転籍させてしまうことができる、
そのような体制ができているという証でもあります。

HR体制のグローバル化を阻んでいるものの本質には、
日本が何十年も培って来た「本社中心の出向制度」にあるのではないでしょうか。
根が深いところに課題がありそうです。

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新GMAT対策についての記事

US Newsで新GMAT対策についての記事が出ていました。

特に、今回新しく導入されたIntegrated Reasoningについて、
すでに受けた受験生からの対策はないです。

ぜひご覧ください。

MBA Applicants Offer 5 Tips for Taking Revised GMAT

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日本国内の在留外国人数の推移(労働者・留学生等)

このブログでは、海外のビジネス動向を中心に書いてきました。

しかし、グローバル化は国外のことだけでなく、
国内にもグローバル化はあります。

今回は、国内の「グルーバル化」について書いてみたいと思います。

思い起こしてみると、日本では、以前から、
「日本人の人口は減少していく。外国人の受け入れは欠かせない」
というようなことが言われてきました。

また、最近では、国内企業が外国人の採用を増やすというニュースも広がり、
日本国内もグローバル化が進んでいるように報道されてもいます。

そこで、まずは、在留外国人数全体のトレンドを見て、
この国内のグローバル化が進んでいるかどうかを検証してみたいと思います。


※数値データはコチラ

このデータは、年度末の時点での登録外国人の数です。
法務省が発表している「登録外国人統計」から取ってきました。

2005年以前のデータでは、ベトナム、タイ、インドネシア、インドの国別人数は、
ローデータが取れなかったので、「その他」にまとめました。

また、日本の入管法上、中華民国(台湾)は中国と位置づけられているため、
この統計からは残念ながら、中国と台湾は一緒のデータとなっています。

このデータの中には、短期観光ビザで滞在している外国人の数も含まれますが、
年間の通算ではないため、
年度末時点に滞在している観光ビザ保有者しか含まれていません。
年間の旅行者合計ではないという点のみは誤解しないでください。

上の図からわかることは、

1) 2008年までは外国人登録者数は年々増加
2) 2008年をピークに外国人登録者数は減少している
3) 中国・台湾人の数が大きく増加
4) 韓国・朝鮮人の数は年々減少
5) 欧米人はほとんどいない

です。

順番に1〜5の内容を見て行きましょう。

1) 2008年までの合計数の増加

図からわかるように、
2008年以前は、バブル崩壊後も、1990年代後半の銀行倒産も関係なく、
一貫して、在留外国人の数は増えてきました。
この間、日本の外国人数は多くなり、
その分、日本は「グローバル化してきた」ということができます。

2008年以前の日本経済は、割と調子が良く、
自動車産業、家電メーカーともに派遣労働者や外国人労働者の数を増やし、
生産コストを抑制しながら、生産増を実現してきました。

日本の外国人数が増えてきた背景には、
日本の製造業が調子がよかったということがあります。

2) 2008年以降は減少

しかし、2008年を機に、このトレンドは大きな変化を迎えます。

2008年と言えば、サブプライプローン危機のタイミングです。
ここで何が起こったのでしょうか。

減少を国籍別に見ると、
大幅に減っているのが、ブラジル、ペルー、そして韓国・北朝鮮です。

ブラジルとペルーの国籍保持者が日本に多い理由は、
ブラジルとペルーの日系人の実子には、
「定住者」という特別な在留資格が与えられており、
日本国籍保有者と同様、
自由に就労活動をすることが法律で認められているためです。
そのため、彼らは、来日すれば、自由に働くことができます。

そのため、国内の製造業者は安い労働力を国内で確保するため、
この日系人に着目し、雇用を増やしていきました。

しかし、2008年のサブプライムローン危機そしてリーマンショック以降、
日本のメーカーは過剰在庫を抱え、生産を大幅に削減。
メーカーは、抱えていた派遣社員や外国人労働者を解雇。
職を失った外国人労働者は母国へ帰国したりもしました。

他方、韓国・北朝鮮の方が日本に多い背景には別の理由があります。
それについては、後ほど、4の「韓国・朝鮮人の数は年々減少」で解説します。

3) 中国・台湾人の数が増加

中国・台湾の方々が増えている背景は何でしょうか。
彼らは、2008年以降も数字の衰えを見せません。

中国・台湾人の増加理由を探るため、
在留資格ごとの増減を見てみます。
※総務省統計局で閲覧可能なデータが2006年分からであったため、
 2006年と2011年分で比較しました。

ここで、大きく数が増減しているものに注目してみたいと思います。

まず、数が大きく増えているのは、「技能・技能実習」の在留資格です。
このうち、大きな割合を占めるのが、技能実習です。
技能実習とは、日本の中国法人などで採用した中国人を日本に呼び、
研修目的で日本の本社などで一定期間就労させるときなどの在留資格です。

しかし、この技能実習の増加は、実は数字のカラクリで、実態を反映してはいません。
技能実習という在留資格は、2009年の入管法改正により新設された在留資格で、
2010年7月より適用されました。
この法改正により、以前は、「研修」「特定活動」に分類されていたものが、
新設の「技能実習」にまとめられた、それだけです。

数字で見てみると、
2006年の「技能・技能実習」「研修」「特定活動」の合計が131,239人。
2011年の「技能・技能実習」「研修」「特定活動」の合計が131,907人。
とほとんど増えていないのがわかります。

したがって、中国・台湾人の日本企業内OJT研修社員の数は
あまり増えていはいません。

一方で、中国人数の増加の真の背景となっているのは、
「投資・経営」「技術」「人文知識・国際業務」「留学」
「永住者」「永住者の配偶者」です。

それぞれの在留資格の中身は、

「投資・経営」:会社への出資、起業、経営参画
「技術」:エンジニア
「人文知識・国際業務」:文系ホワイトカラー
「留学」:留学生

です。

すなわち、中国・台湾人が、いわゆる日本企業の下請けとしてではなく、
日本人と同様の仕事に多数チャレンジしてきていることがわかります。
また、昨今の日本企業の中国人採用の流れも、この数字に表れてきます。

さらに、増えているのが、「永住者」「永住者の配偶者」。
日本の永住権を取得するためには、10年以上日本国内に在留し続けること、
もしくは、日本人と国際結婚をして永住権を取得することが、
主要な要件となっています。
日本に定着する中国・台湾人の数も年々増えているということがわかります。

4) 韓国・朝鮮人の減少

同様に、在留外国人数の多い韓国・朝鮮人についても、
在留資格別の増減を見ていきましょう。

韓国・朝鮮人の中で圧倒的な割合を占めるのは、「特別永住者」の在留資格です。
全体の7割を超えています。

特別永住者とは、いわゆる「在日韓国人」「在日朝鮮人」の方のことを指します。
日本は1952年、サンフランシスコ講和条約で、
日本の国家主権と韓国、北朝鮮の独立を認めた後、
日本に在留している韓国・朝鮮人、台湾人に対して
法律で日本の国籍を失くす手続きをとりました。
その結果、
戦後も日本国内に残った韓国・朝鮮人、台湾人の方々は「外国人」となりました。
※Wikipeida参照

韓国・朝鮮人の減少の大きな要因は、この在日韓国・朝鮮人の方の減少です。
背景として上がられるのは、以下の3つです。

(1)日本人との結婚の増加(日本国籍取得の申請が可能)
(2)在日韓国・朝鮮人と日本人との子供の日本国籍選択
(3)それ以外の日本国籍取得者の増加

このように、在日韓国・朝鮮人の方々の中で、
日本国籍保有者が増えていることがその背景にはあるようです。

それ以外の在留資格では、
「投資・経営」「人文知識・国際業務」の保有者は増えています。
が、一方で、「技術」「留学」の保有者は減少しています。

中国・台湾人との比較では、韓国・朝鮮人の方が、
日本での就業を得ていく数は、それほど多くはありません。

その結果、
在日韓国・朝鮮人の方の日本国籍取得が増える一方、新たな在留者は減っており、
全体の在留韓国・朝鮮人の数は減少しています。

5) 欧米人は少ない

アジア人の在留者に比べ、欧米の在留者は非常に数が少ないです。
欧米の中で最多のアメリカ人でも、約5万人しかいません。

六本木に夜行くと、たくさん欧米系の人がいるような錯覚に襲われますが、
実際には、日本には欧米の方々はあまりいません。
※在留者の数であって、旅行者の数ではありません。

今回は、日本国内のグローバル化の現状を見てみました。

最近、海外で働きたい日本人が増えてきているという話も聞きますし、
海外に活路を見出すしかないという企業の話も報道されるようになりました。

日本人が外に出て行くのであれば、外国の方も日本に増えていいと僕は思います。
その方が、日本企業は外のマーケットに対する理解や感覚が増すことに繋がります。

一方で、日本の外国人の数は、2008年減ってきています。
日本人の人口減少に加え、外国人数も減少しているのが現実。
日本市場のこれ以上の縮小を食い止めるためにも、
日本がより魅力的な国になるよう、
積極的に日本国内のグローバル化を進めて行っていいのではないかと僕は思います。

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